この記事は、社員にAI研修をZoomなどのオンライン配信やeラーニングで受けさせたい中小企業の社長・研修担当者の、「オンラインでも助成金は出るのか」「受講中に何を記録しておけば、後で減額されないのか」が分からないという困りごとを解決するために、私たちが助成金を使った研修で実際に受講記録を確認しているやり方をまとめたものです。
📌AI研修の助成金の全体像(対象確認・研修選び・金額・日程・社労士・申請の6つの順番)は「AI研修の助成金 完全ガイド」にまとめています。
結論:オンライン研修もeラーニングも、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の対象になります。ただし条件は形式で分かれ、①講師にその場で質問できるライブ配信(同時双方向型の通信訓練)は実訓練時間10時間以上で出席が8割以上、②eラーニングは標準学習時間10時間以上(または標準学習期間1か月以上)で、LMS(受講管理システム)で進み具合を管理でき、期間内に修了すること、③定額制サービス(サブスク型)は修了した講座が合計10時間以上で、実施期間が1年以内であることが必要です。受講1時間あたりの賃金助成が出るのは①だけで、ライブを欠席して録画を後から見た時間は、ライブの受講時間として数えられません。
「オンラインだから対象外」ということはありません。つまずくのは、自社の研修がどの形式に当たるのかを決めないまま始めてしまい、形式ごとに必要な受講記録がそろわないケースです。この記事では、形式の見分け方、形式ごとに残す記録、オンラインならではの減額の落とし穴、私たちが受講記録をどう確認しているかを順に説明します。制度の内容は厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」の支給要領(令和8年8月3日版)をもとにしています。
まず、自社のオンライン研修が「どの形式」に当たるかを見分ける
支給要領では、研修の受け方を「通学制(対面)」「同時双方向型の通信訓練(ライブ配信)」「eラーニング」「通信制」「定額制サービス」に分けています。「オンライン研修」と呼ばれるものは、このうちライブ配信・eラーニング・定額制サービスのどれかに当たります。形式によって、満たす条件も、出るお金も、残す記録も変わります。
| 形式 | 見分け方 | 主な条件 | 賃金助成 | 支給申請で出す受講記録 |
|---|---|---|---|---|
| ライブ配信(同時双方向型) | Zoomなどで講師と同じ時間につながり、受講中にその場で質問できる | 1コースの実訓練時間10時間以上。各社員の受講時間が実訓練時間の8割以上 | あり(中小企業は所定労働時間内の受講1時間あたり1,000円) | OFF-JT実施状況報告書(研修日ごとの実施時間・出席日・受講時間) |
| eラーニング | 講義動画などを各自の時間に受け、LMSで進み具合を管理できる | 標準学習時間10時間以上または標準学習期間1か月以上。訓練期間内に修了 | なし(経費助成のみ) | eラーニング訓練実施結果報告書、修了証の写し、LMSの記録の写し |
| 定額制サービス(サブスク型) | 月額・年額で複数の講座を受け放題にできる(eラーニングやライブで提供) | 修了した講座が10時間以上。訓練の実施期間は1年以内。ほかの形式と組み合わせない | なし(経費助成のみ) | 定額制サービスによる訓練実施結果報告書など |
見分けるときのポイントは、「受講中に講師へその場で質問できるか」です。画面越しでも、講師とリアルタイムにやりとりできればライブ配信(同時双方向型)です。一方的に講義を流すだけのものは、ライブの形をとっていてもこの形式には当たりません。また、通学制やライブの研修で「もっぱらビデオを見るだけ」の講座は、支給要領で対象外とされています。
研修会社に問い合わせるときは、「この研修は支給要領のどの実施方法として計画届を出しますか?」と、形式の名前で聞くのが確実です。ここがあいまいなまま契約すると、計画届に書く内容も、受講中に残す記録も決まりません。
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金の条件チェックリスト|契約前に確かめる会社・社員・研修・時期の15項目」へ(形式以外の会社・社員・時期の条件もまとめて確認したい方)
形式ごとに、受講中から残しておく記録
助成金は、研修が終わってから受講の記録を添えて支給申請します。記録は後から作れないので、受講が始まる前に「誰が、何を、いつ確認するか」を決めておきます。
ライブ配信(同時双方向型)の場合
- 研修日ごとの出席と受講時間:何時から何時まで受けたかを、社員ごとに残します。途中で抜けた時間は受講時間に入りません。研修会社が出す出席記録と、社内の記録が食い違わないようにします。
- その日の出勤簿・タイムカードと賃金台帳:賃金助成は所定労働時間内に受けた時間だけが対象なので、勤務時間と受講時間を突き合わせられるようにしておきます。
- 8割に届いているかの途中確認:たとえば実訓練時間20時間の研修なら、16時間以上の出席が必要です。欠席が出た時点で、残りの日程に全部出れば8割に届くかを計算します。
eラーニング・定額制サービスの場合
- LMSの記録:支給要領では、講座ごとの修了日、受講開始日時と終了日時、受講時間数、進捗率が分かるLMSの記録の写しを出すことになっています。研修会社の管理画面からこの項目を出力できるかを、契約前に確認します。
- 修了証:研修会社が修了を証明していることが分かるものが必要です。
- 月に1回の進み具合の確認:eラーニングは訓練期間内に修了した社員だけが対象です。期間の最後にまとめて見ようとすると間に合わないことがあるので、担当者が月に1回は社員ごとの進み具合を見ます。
なお、eラーニングや定額制サービスの研修でも、会社が業務として受けさせる研修は労働時間に当たるため、受講中の賃金を払う必要があると支給要領に書かれています。「動画は家で見ておいて」という受けさせ方は、助成金の面でも労務の面でも避けてください。
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金申請の流れと必要書類|計画届から支給申請まで4段階で「いつ・何を・誰が」出すか」へ(計画届と支給申請で出す書類の一覧)
オンライン研修で助成金が減りやすい7つの場面
ここからは、対面の研修にはない、オンライン・eラーニングならではの落とし穴です。どれも始める前に決めておけば防げます。
- ライブを欠席し、録画で補った:録画を後から見た時間は、講師とその場でやりとりしていないため、ライブ配信の受講時間としては数えられません。欠席が重なると8割に届かなくなります。研修日は、上司が先に予定表に入れて他の仕事を入れないのが一番の対策です。
- 勤務時間外や有給休暇の日に受けさせた:賃金助成は所定労働時間内の受講だけが対象です。また、年次有給休暇を与えて受講させた研修は、支給要領で「適切な方法でないもの」の例に挙げられています。
- eラーニングを期間の最後に駆け込みで受けた:LMSには受講の開始・終了日時と進捗率が残ります。期間の最後に一気に見ようとして修了が間に合わなければ、その社員の分は対象外です。
- 同じ社員に、同じ年度でeラーニングの研修を2本受けさせた:令和8年8月3日以降に出す計画届からは、eラーニングで助成を受けられるのは同じ社員につき1年度に1回までです。どちらで助成を受けるかを先に決めます。
- 定額制サービスとライブ研修を組み合わせて1つの計画にした:定額制サービスの研修は、通学制など他の方法の研修と組み合わせることができず、定額制サービスだけで計画する必要があります。
- 自社で作った動画をeラーニングにした:eラーニングで助成の対象になるのは、研修会社などに委託して行う研修です。社内で作った動画を社員に見せる研修や、特定の会社向けにだけ作られたeラーニングは対象外です。
- 休憩を受講時間に入れて計算した:ライブや対面の研修では、合間の小休止を1日60分まで実訓練時間に含められますが、eラーニングと定額制サービスではこの扱いがありません。標準学習時間が10時間にぎりぎりの講座は、余裕を持って選びます。
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金が不支給・減額になる10の失敗例|時期別の防ぎ方と途中で気づいたときの立て直し方」へ(形式に関係なく起きる失敗例と、途中で気づいたときの立て直し方)
私たちが受講記録をどう確認しているか(定額制のeラーニングの例)
私たちの法人プランは、講義動画を受け放題で学ぶ定額制の研修です。助成金を使う会社では、研修が終わってから記録を集めるのではなく、受講中から次のように確認しています。
- 受講者ごとに、講義動画1本ずつの視聴の開始時刻と終了時刻をLMSから取り出し、その講義の標準学習時間と照らし合わせます。
- その講義を最後まで見ているか、視聴した時間が勤務時間の中に収まっているかを、会社の勤務時間(シフトがある会社はシフト)と突き合わせて確認します。
- 基準に届いていない講義があれば、期間が残っているうちに会社の担当者へ伝え、業務時間内に見直してもらいます。
- 確認した結果は、受講者ごとの一覧にまとめ、支給申請で出す報告書の作成に使います。
こうした確認を受講中に入れているのは、eラーニングは「いつでも見られる」ぶん、後回しになりやすいからです。記録の不足に研修が終わってから気づいても、取り戻せません。
もう1つ、私がオンライン研修でいつも気にしているのは、講義動画を一人で見るだけだと、つまずいたときに聞く相手がいないことです。目の前に講師がいれば困ったときにすぐ聞けて取り残されませんが、動画だけでは手が止まったまま進まなくなります。助成金の条件を満たすことと、研修が業務に役立つことは別の話です。私たちが毎月の面談で、各社の困りごとに合わせて「次はこの講義を見て、この業務で試しましょう」とお伝えしているのは、そのためです。
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金はいくら?経費助成75%と上限額・賃金助成の計算方法|自己負担の出し方を3ステップで解説」へ(ライブ研修と定額制研修で、実際にいくら戻るかの計算例)
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修はオンラインと集合どちらがいい?4つの形式の違いと自社に合う組み合わせ方」へ(助成金とは別に、学ぶ内容に合った形式を選びたい方)
オンライン研修・eラーニングの助成金に関するよくある質問
Zoomで受けるAI研修は、助成金の対象になりますか?
対象になります。講師とリアルタイムにつながり、受講中にその場で質問できる研修は「同時双方向型の通信訓練」として扱われ、対面の研修と同じく実訓練時間10時間以上・出席8割以上が条件です。受講時間1時間あたりの賃金助成も対象になります。
ライブ研修を休んだ社員が、録画を見れば出席扱いになりますか?
ライブ配信の受講時間としては数えられません。同時双方向型の研修は、講師とその場でやりとりできることが前提だからです。欠席が出たら、残りの日程に全部出れば8割に届くかを早めに計算し、届かない場合は社労士に相談してください。
eラーニングを自宅や休日に見てもよいですか?
会社が業務として受けさせる研修は労働時間に当たり、受講中の賃金を払う必要があります。自宅や休日に見る場合も労働時間として扱う必要があり、年次有給休暇の日に受けさせるのは避けてください。勤務時間内に受講の時間を確保するのが確実です。
eラーニングの研修を選ぶとき、研修会社に何を確認すればよいですか?
「標準学習時間(または標準学習期間)はどれだけか」「LMSから受講開始・終了日時、受講時間数、進捗率、修了日を社員ごとに出力できるか」「修了証を発行するか」の3つです。この3つがそろわないと、支給申請で出す記録が用意できません。
※助成金の要件・助成率・上限額は改正されることがあります。最新の内容は厚生労働省の人材開発支援助成金のページ、または管轄の都道府県労働局でご確認ください。
まとめ:オンラインでも対象。形式を決めて、受講中から記録を残す
オンラインのAI研修やeラーニングも、人材開発支援助成金の対象になります。大事なのは、最初に「ライブ配信」「eラーニング」「定額制サービス」のどれで計画するかを研修会社と決め、その形式の条件(10時間以上、出席8割、期間内の修了など)と、残す記録(出席記録、LMSの記録、修了証)を受講が始まる前にそろえておくことです。まずは検討中の研修について、研修会社に「どの実施方法で計画届を出すか」と「LMSから何を出力できるか」を聞くところから始めてください。
「オンラインで研修したいが、自社の研修がどの形式に当たるのか分からない」「受講記録を誰がどう管理すればよいか決められない」という場合は、無料相談で状況をお聞かせください。受講企業400社・受講者4,000人以上の研修のお手伝いをもとに、提携社労士と一緒に確認し、助成金を使わない方がよい場合も含めて正直にお伝えします。