この記事は、社員にAI研修を受けさせたいが「助成金でいくら戻って、結局うちの負担はいくらなのか」が分からず、予算も社内の稟議も進められない中小企業の社長・総務担当者の困りごとを解決するために、私がこれまで助成金を使った研修のお手伝いで見てきたことをまとめたものです。
📌AI研修の助成金の全体像(対象確認・研修選び・金額・日程・社労士・申請の6つの順番)は「AI研修の助成金 完全ガイド」にまとめています。
結論:AI研修の助成金(人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース)で戻る額は、中小企業の場合「経費助成(研修費の75%。ただし1人あたりの上限まで)」と「賃金助成(所定労働時間内に受講した1時間あたり1,000円。ライブ研修・集合研修のみ)」の合計です。経費助成の上限は、1人1計画あたり実訓練時間10〜100時間未満で30万円、100〜200時間未満で40万円、200時間以上で50万円、定額制サービス(サブスク型)の研修は1人1か月あたり2万円です。会社の自己負担は「払った研修費(税込)−経費助成」で計算し、賃金助成は受講中の給料の一部が戻るお金として分けて考えます。
この記事では、計算に使う数字を一覧にしたうえで、自社の金額を3ステップで出す方法と、ライブ研修・定額制研修の2つの計算例、計算で間違えやすいところを順に説明します。数字は厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」の支給要領(令和8年8月3日版)をもとにしています。
「何パーセントの確率で出るか」より先に、「いくら戻るか」を計算する
助成金のご相談で、私がよく聞かれるのは「うちでも受かりますか」「何パーセントぐらいの確率で出ますか」という質問です。これは、審査で採択される件数が決まっている「補助金」と混同されていることが多いからです。研修の助成金は、合格・不合格の審査ではなく、支給要領に書かれた要件(社員が雇用保険に入っている、計画届を期限内に出す、決められた時間を受講する、など)を満たしているかを確認する仕組みです。
ですから、社長や担当者が最初に考えるべきなのは「確率」ではなく、要件を満たしたときに「いくら戻り、いくら自己負担が残るか」です。ここが数字で出ていないと、研修の人数も、予算も、社内の稟議も決められません。逆に、計算の仕組みさえ分かれば、研修会社の見積書を見ながら自社で概算を出せます。
AI研修の助成額の計算に使う数字の一覧
計算に必要な数字は、次の表でほぼすべてです。中小企業かどうかは、業種ごとの資本金と常時雇用する労働者数で決まります(たとえば、小売業・サービス業・卸売業以外の「その他の業種」は資本金3億円以下または労働者300人以下)。
| 項目 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 経費助成率(研修費のうち戻る割合) | 75% | 60% |
| 賃金助成(所定労働時間内の受講1時間あたり) | 1,000円 | 500円 |
| 経費助成の上限(1人1計画・実訓練時間10〜100時間未満) | 30万円 | 20万円 |
| 経費助成の上限(100〜200時間未満) | 40万円 | 25万円 |
| 経費助成の上限(200時間以上) | 50万円 | 30万円 |
| 経費助成の上限(定額制サービスの研修) | 1人1か月あたり2万円 | 1人1か月あたり2万円 |
| 賃金助成の時間の上限 | 1人1計画あたり1,200時間 | 1人1計画あたり1,200時間 |
| 1事業所1年度の上限 | 1億円 | 1億円 |
eラーニングや通信制の研修で標準学習時間が決まっているものは、その時間で上の区分に当てはめます。標準学習時間が決まっていないeラーニングは、時間に関係なく1計画あたり中小企業30万円・大企業20万円が上限です。また、eラーニング・通信制・定額制サービスの研修には、賃金助成はありません。
なお、令和8年8月3日版の支給要領では、研修とあわせてソフトウェアなどを導入した中小企業向けに「設備投資加算」(導入費用の50%、1人あたり15万円・10人以上は150万円まで)も設けられています。研修の費用とは別の計算になるので、使う場合は社労士か労働局に確認してください。
自社の助成額と自己負担を3ステップで出す方法
ステップ1:助成の対象になる研修費を確かめる
研修会社に払う受講料・入学料・教科書代などが対象です。支給要領では消費税も対象経費に含まれているので、見積書の税込金額で計算します。一方、受講者の交通費や宿泊費など研修に直接かからない費用は対象外です。社労士に書類作成を頼む場合の報酬も、対象経費の一覧には入っていません。
もう1つの前提は、研修費を会社が全額負担していることです。社員に一部を払わせたり、研修会社からキャッシュバックや協力金を受け取ったりすると、経費助成はゼロになります。
ステップ2:経費助成を「75%」と「上限」の小さい方で出す
1人あたりの研修費に75%(大企業は60%)をかけ、表の上限と比べて小さい方がその人の経費助成です。これに受講する人数をかけます。
経費助成 = 「1人あたり研修費(税込)× 75%」と「1人あたりの上限」の小さい方 × 人数
定額制サービスの研修は、ここに注意が1つあります。対象経費は「契約金額 ×(計画届に書いた訓練の実施期間の日数 ÷ 契約期間の日数)」で按分されます。たとえば12か月契約なのに訓練期間を6か月で計画すると、対象になるのは契約金額の半分です。
ステップ3:ライブ・集合研修なら賃金助成を足す
講師とリアルタイムでやりとりする研修(集合研修・オンラインのライブ研修)では、受講時間1時間あたり1,000円(大企業は500円)が賃金助成として出ます。数えられるのは所定労働時間内に受講した時間だけで、残業時間や休日(あらかじめ振り替えた場合を除く)の受講は入りません。社員が自己都合退職を申し出た日以降の研修も、その社員の賃金助成の対象外です。
賃金助成 = 所定労働時間内の受講時間 × 1,000円 × 人数
最後に、自己負担 = 払った研修費(税込)− 経費助成です。賃金助成は、研修中も社員に払っている給料の一部が戻るお金なので、研修費の自己負担とは分けて考えた方が、社内での説明がぶれません。
計算例:ライブ研修と定額制研修でいくら戻るか
例1:ライブ研修(仮の数字)を中小企業の社員5名が受ける場合
1人あたりの受講料が税込22万円、実訓練時間20時間のオンラインライブ研修を、社員5名が全員、所定労働時間内に受講したとします(計算の仕組みを示すための仮の数字です)。
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 払う研修費:22万円 × 5名 | 110万円 |
| 経費助成:22万円 × 75% = 16.5万円(上限30万円以内)× 5名 | 82.5万円 |
| 賃金助成:20時間 × 1,000円 × 5名 | 10万円 |
| 研修費の自己負担:110万円 − 82.5万円 | 27.5万円 |
戻る額の合計は92.5万円です。ただし、5名のうち1名の出席が実訓練時間の8割(この例では16時間)に届かないと、その1名分の経費助成と賃金助成は出ません。
例2:定額制の研修(ホリエモンAI学校の法人プラン)を4名が受ける場合
私たちの法人プランは、1名あたり年31万円(税別)の定額制です。税込では34.1万円で、その75%は約25.6万円ですが、定額制の上限が1人1か月2万円なので、12か月の計画なら1人あたり24万円で止まります。法人プランのページで「1人あたり年間最大24万円」とご案内しているのは、この上限のためです。
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 払う研修費:34.1万円(税込)× 4名 | 136.4万円 |
| 経費助成:「34.1万円 × 75% ≒ 25.6万円」と「2万円 × 12か月 = 24万円」の小さい方 × 4名 | 96万円 |
| 賃金助成(定額制のため対象外) | 0円 |
| 研修費の自己負担:136.4万円 − 96万円 | 40.4万円(1人あたり10.1万円) |
書類づくりを社労士に頼む場合は、これとは別に報酬がかかります。私たちの提携社労士の場合、申請サポートの報酬は14万円前後が目安です。自社で申請すればこの費用はかかりませんが、計画届から支給申請までの手間は自社で負うことになります。
助成額の計算で間違えやすい5つのところ
- 研修費の全額に75%をかけてしまう:1人あたりの上限があります。高額な研修や定額制の研修ほど、上限で止まって75%に届かないことがあります。
- eラーニングでも賃金助成が出ると思い込む:賃金助成はライブ研修・集合研修だけです。eラーニング・通信制・定額制の研修は経費助成のみで計算します。
- 研修費が最初から割り引かれると思う:助成金は、研修が終わってから申請し、審査を経て振り込まれます。研修費はいったん会社が全額払うので、その間の資金繰りも予算に入れてください。
- 社労士の報酬や交通費も戻ると思う:これらは対象経費に入っていません。自己負担の計算に足してください。
- 定額制の契約期間と訓練期間がずれている:訓練期間が契約期間より短いと、対象経費が日数で按分されて減ります。契約前に、計画届に書く訓練期間を研修会社と合わせておきます。
このほか、「助成金を使えば実質無料になります」という提案には注意してください。助成金は会社が払った研修費の一部を助成する制度で、無料になる制度ではありません。研修会社から協力金や謝礼を受け取ると、経費助成の対象外になり、不正受給とされるおそれもあります。
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金が不支給・減額になる10の失敗例|時期別の防ぎ方と途中で気づいたときの立て直し方」へ(出席8割・費用の全額負担など、助成額が減る原因と防ぎ方)
自社の金額を出すために、研修会社に聞く4つのこと
上の計算は、次の4つが分かれば自社で概算できます。見積もりをもらうときに、まとめて聞いてください。
- 1人あたりの受講料は税込でいくらですか?:ステップ1の対象経費になります。
- 実訓練時間(eラーニングなら標準学習時間)は何時間ですか?:上限の区分(30万円・40万円・50万円)が決まります。10時間未満だと対象外です。
- ライブ・集合研修ですか、eラーニングですか、定額制ですか?:賃金助成があるかどうか、上限が時間で決まるか月で決まるかが変わります。
- 研修は所定労働時間内に受けられる日程ですか?(定額制なら契約期間は何か月ですか?):賃金助成の時間と、定額制の上限・按分が決まります。
私たちのご相談では、受講料と人数をうかがったうえで、提携社労士が助成金の対象になるかと必要な書類を確認します。対象にならない場合や、助成金を使わない方が手間に見合う場合は、その旨をそのままお伝えしています。
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金の条件チェックリスト|契約前に確かめる会社・社員・研修・時期の15項目」へ(そもそも対象になるかを先に確かめたい方)
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金申請の流れと必要書類|計画届から支給申請まで4段階で「いつ・何を・誰が」出すか」へ(計画届から支給申請までの手順)
AI研修の助成金の金額に関するよくある質問
AI研修の助成金は、1人あたり最大いくらもらえますか?
中小企業の経費助成は、1人1計画あたり実訓練時間に応じて30万円・40万円・50万円が上限です。ライブ研修・集合研修なら、これに所定労働時間内の受講1時間あたり1,000円の賃金助成が加わります。定額制サービスの研修は、1人1か月2万円(12か月で24万円)が上限です。
助成金はいつ振り込まれますか?
研修が終わってから、終了日の翌日から2か月以内に支給申請をし、労働局の審査を経て振り込まれます。審査にかかる期間は労働局や申請の時期によって違います。研修費は先に会社が全額払う必要があるので、その間の資金繰りを見込んでおいてください。
社員1〜2名だけの受講でも、計算方法は同じですか?
同じです。人数の下限はなく、受講する社員が雇用保険に入っていれば、1人あたりの計算に人数をかけるだけです。ただし、社労士の報酬は人数が少なくても大きくは変わらないため、少人数では自己負担に占める割合が高くなります。
※助成金の要件・助成率・上限額は改正されることがあります。最新の内容は厚生労働省の人材開発支援助成金のページ、または管轄の都道府県労働局でご確認ください。
まとめ:助成額は「75%と上限の小さい方」+賃金助成で計算する
AI研修の助成金でいくら戻るかは、中小企業なら「税込の研修費×75%」と「1人あたりの上限(時間に応じて30〜50万円、定額制は月2万円)」の小さい方に人数をかけた経費助成と、ライブ・集合研修で所定労働時間内に受講した1時間あたり1,000円の賃金助成で決まります。自己負担は、払った研修費から経費助成を引き、社労士の報酬などの対象外の費用を足して出してください。まずは検討中の研修の見積書を手元に置き、この記事の4つの質問の答えを埋めるところから始めてください。
「見積もりはあるが、助成金を使うと実際いくらになるのか計算が合っているか不安」「何名で始めれば負担と効果のバランスがよいか決められない」という場合は、無料相談で状況をお聞かせください。受講企業400社・受講者4,000人以上の研修のお手伝いをもとに、助成金を使わない方がよい場合も含めて正直にお伝えします。