この記事は、AI研修で助成金を使うと決めた中小企業の社長・総務担当者の、「申請の書類が多すぎて、いつ・何を・どこに出せばいいのか分からない」という困りごとを解決するために、私がこれまで助成金を使った研修のお手伝いで見てきたことをまとめたものです。
📌AI研修の助成金の全体像(対象確認・研修選び・金額・日程・社労士・申請の6つの順番)は「AI研修の助成金 完全ガイド」にまとめています。
結論:AI研修の助成金(人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース)の申請は、①計画届の前の社内準備、②研修開始日の6か月前から1か月前までの計画届、③受講中の記録づくり、④研修終了日の翌日から2か月以内の支給申請、の4段階で進みます。提出先はどちらも会社の所在地を管轄する労働局で、計画届では職業訓練実施計画届(様式第1-1号)など必ず出す5種類の書類と研修会社との契約書の写し、支給申請では支給申請書(様式第4-2号)や受講の記録など10種類前後の書類を出します。
この記事では、研修開始日を7月1日とした例で、段階ごとに「いつまでに」「どの書類を」「誰が用意するか」を一覧にしました。社内の担当者が、この記事を横に置いて準備を進められるように書いています。
書類名・期限は、厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」のページに掲載されている、計画届時・支給申請時に必要な書類のパンフレット抜粋をもとにしています。
申請でつまずくのは、書類の中身より「段階ごとの締め切り」です
助成金のご相談を受けていて、私がいつも感じるのは、手続きの全体像が見えないまま始めてしまう会社が多いということです。厚生労働省の支給要領は100ページを超えていて、申請書類を見ても、どこに何を書けばよいのかがすぐには分かりません。
お客様が手間取るのは、特定の1枚の書類ではありません。受講前の計画書、受講中に要件を満たす受講履歴の提出、受講後の申請、申請後の労働局からの個別の問い合わせへの回答と、すべての段階で手間取ります。そして、どの段階にも「過ぎたら取り返せない締め切り」があります。
だからこそ、最初に4つの段階と締め切りを社内で共有しておくことが、一番の近道です。下の表を、研修を決めた日に担当者と一緒に見てください。
| 段階 | いつ(7月1日開始の例) | 主にやること |
|---|---|---|
| ① 社内準備 | 計画届を出す前まで(目安:4〜5月) | 受講者を決める、推進者を選ぶ、事業内職業能力開発計画を作る、研修会社から資料をもらう |
| ② 計画届 | 1月1日〜6月1日(開始日の6か月前〜1か月前) | 労働局へ職業訓練実施計画届などを提出 |
| ③ 受講中 | 7月1日〜研修の最終日 | 出席・学習の記録、受講料の支払い、賃金の支払いの記録を残す |
| ④ 支給申請 | 研修の最終日の翌日から2か月以内 | 労働局へ支給申請書と受講・支払いの証拠を提出 |
※申請後に、労働局から追加の書類や説明を求められることがあります。担当者は、支給が決まるまで書類を手元に残しておいてください。
段階①:計画届の前にやる社内準備
計画届そのものより先に、社内で決めておくことがあります。ここが固まっていないと、計画届の書類が書けません。
- 受講者を決める:雇用保険に入っている社員から選びます。研修期間中に退職や長期の休みの予定がなく、受講時間を確保できる人かも確かめます。
- 職業能力開発推進者を1人決める:社内で研修の窓口になる人です。中小企業では総務担当者や社長が兼ねることが多くあります。
- 事業内職業能力開発計画を作り、社員に周知する:会社として社員をどう育てるかの方針です。作り方は厚生労働省の解説ページに例があります。
- 研修会社から資料をもらう:カリキュラム(日ごとの内容と時間)、受講料、契約書または申込書の写しです。計画届に添付します。
- 電子申請にするか決める:雇用関係助成金ポータルで電子申請する場合は、GビズIDの取得が必要です。計画届を紙で出すと、そのあとの変更届と支給申請も電子申請できないので、最初に決めておきます。
このうち一番時間がかかるのは、「この研修で、どの業務をどう変えるのか」を言葉にすることです。計画届には事業展開等実施計画(様式第1-3号)があり、研修の目的を会社のデジタル化・DX化と結びつけて書く必要があります。私たちの研修では最初に、受講者に自分の業務を四角と矢印で書き出してもらい、面倒な作業を5つ挙げてもらいます。これを先にやっておくと、計画の「何のための研修か」がそのまま書けるようになります。
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金の条件チェックリスト|契約前に確かめる会社・社員・研修・時期の15項目」へ(準備の前に、自社が条件に当てはまるかの確認)
段階②:計画届で出す書類(研修開始日の6か月前から1か月前まで)
計画届は、研修開始日の6か月前から1か月前までの間に、会社の所在地を管轄する労働局へ出します。7月1日開始なら1月1日から6月1日までです。期限が土日・祝日にあたる場合は翌開庁日が期限になります。
📌制度がいつまで使えるかと、研修開始日ごとの計画届の締め切りは「【2026年最新】AI研修の助成金はいつまで?2027年3月までの期限と、研修開始日から逆算する申請スケジュール」にまとめています
郵送の場合は、消印ではなく労働局に届いた日が提出日です。締め切りぎりぎりに投函すると間に合わないことがあるので、簡易書留など記録が残る方法で余裕をもって送ってください。窓口へ直接持ち込むか、電子申請でも提出できます。
計画届で出す書類(通学制・オンラインのライブ研修・eラーニングの場合)
| 書類 | 中身 | 誰が用意するか |
|---|---|---|
| 職業訓練実施計画届(様式第1-1号) | どの研修を、いつからいつまで受けさせるか | 会社(代理人が出す場合は委任状の原本も) |
| 事業展開等実施計画(様式第1-3号) | 会社のデジタル化・DX化などの取り組みと、研修の目的 | 会社 |
| 対象労働者一覧(様式第3-1号) | 受講する社員の一覧 | 会社 |
| 事前確認書(様式第11号) | 制度の要件を理解しているかの確認 | 会社 |
| 訓練カリキュラム・受講案内など | 目的、日ごとの内容、実訓練時間、受講料。eラーニングは標準学習時間(または期間)と、学習の進み具合を管理できる仕組み(LMS)があること | 研修会社 |
| 研修会社との契約書、または受講案内と申込書の写し | 研修会社の名称・連絡先、契約内容、受講できる期間、受講料 | 研修会社と会社 |
計画届は原則として受講する社員ごとに作りますが、同じ日時の同じ研修であれば、対象労働者一覧(様式第3-1号)にまとめて1つの計画届にできます。また、研修会社から受講料の負担を軽くする説明資料(受講案内以外)をもらっている場合は、それも添付が必要です。
添付書類の写しは、原本をコピー機で複写したものを出します。原本から書き写したり、別に作り直したりした書類は無効になります。
段階③:受講中に残しておく記録
研修が始まったら、担当者の仕事は「あとで出す証拠を毎回残すこと」になります。支給申請のときに慌てて集めようとしても、出勤簿や受講の記録はさかのぼって作れません。
- 通学制・オンラインのライブ研修:研修日ごとの受講時間と出席が分かる記録(OFF-JT実施状況報告書に書く内容)、その日の出勤簿またはタイムカード、賃金台帳または給与明細。
- eラーニング:学習の進み具合と修了日が分かるLMSの記録、研修会社が発行する修了証。期間の途中で止まっている社員がいないか、担当者が月に1回は進み具合を確認します。
- 受講料の支払い:研修会社からの請求書と、会社の口座から支払った記録(領収書、振込の記録、または総勘定元帳の写し)。受講料は会社が負担します。
- 受講者や日程が変わったとき:計画届の内容を変える場合は、変更届を出します。変更が分かった時点で、すぐに研修会社と社労士に相談してください。
受講中の記録で困るのは、社員が仕事の都合で欠席したり、eラーニングを後回しにしたりする場面です。研修の時間を、上司が先に予定表に入れておくことが一番の対策です。
段階④:支給申請で出す書類(研修の最終日の翌日から2か月以内)
支給申請は、研修の最終日の翌日から2か月以内に、計画届と同じ管轄の労働局へ出します。厚生労働省のパンフレットでもこの期間は「厳守」とされています。ここでいう研修の最終日は、実際に受け終わった日ではなく、計画届に書いた「訓練の実施期間」の最終日です。また、申請には計画届を出した日時点の様式を使います。様式は改正されることがあるので、最新版を勝手にダウンロードしないよう注意してください。
支給申請で出す主な書類
| 書類 | 中身 | 誰が用意するか |
|---|---|---|
| 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号) | 助成金を受けられない事情がないことの申し立て | 会社 |
| 支給申請書(様式第4-2号) | 申請する助成額 | 会社 |
| 事業所確認票(様式第13号) | 中小企業に当たるかの確認(中小企業の場合) | 会社 |
| 経費助成の内訳(様式第6-2号) | 受講料など、助成の対象になる費用 | 会社 |
| 賃金助成の内訳(様式第5号) | 研修を受けた時間の賃金(ライブ研修・通学制の場合) | 会社 |
| OFF-JT実施状況報告書(様式第8-1号)/eラーニングは訓練実施結果報告書(様式第8-3号) | 受講した時間・出席・修了の状況 | 会社(研修会社の記録をもとに) |
| 修了証・LMSの記録の写し(eラーニングの場合) | 修了したこと、進み具合と終了日 | 研修会社 |
| 雇用契約書または労働条件通知書の写し | 受講した社員の雇用の内容 | 会社 |
| 賃金台帳・出勤簿の写し(ライブ研修・通学制の場合) | 研修を受けた日の勤務と賃金 | 会社 |
| 受講料の請求書と領収書(または振込の記録)の写し | 会社が受講料を払ったこと | 研修会社と会社 |
| 支給申請承諾書(様式第12号) | 研修会社が申請を承諾していること(社外の研修の場合) | 研修会社 |
このほか、助成金の振込先の口座をまだ登録していない場合は、支払方法・受取人住所届も出します。社員が自己都合で退職して研修を途中でやめた場合でも、ほかの社員が最後まで受講していれば、通常どおり全員分をまとめて申請します。
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金は個人でも使える?個人は給付金20〜80%・法人は最大75%|立場別の見分け方」へ(会社の助成金と、個人が使える給付金の違い)
研修会社に、契約前に頼んでおく4つの書類
上の表のうち、「研修会社」と書いた書類は、会社だけでは用意できません。研修が始まってから頼むと、形式が合わずに作り直しになることがあります。契約の前に、次の4つを出してもらえるか確認してください。
- 日ごとの内容と時間が書かれたカリキュラム(計画届に添付。eラーニングなら標準学習時間とLMSの説明)
- 受講者ごとの出席・学習の記録(支給申請のOFF-JT実施状況報告書や訓練実施結果報告書のもとになる)
- 修了証(eラーニングの場合は必須)
- 支給申請承諾書(様式第12号)への記入と、請求書・領収書の発行
ホリエモンAI学校では、研修の中身の相談と並行して、顧問の社労士が助成金の要件確認と書類づくりをお手伝いしています。もちろん、管轄の労働局や、お付き合いのある社労士に相談しながら自社で進めることもできます。その場合も、上の4つの書類は研修会社側で用意するものなので、契約前に必ず確認してください。
社労士に頼むか自社で申請するかの決め方と、会社・社労士・研修会社の分担は「AI研修の助成金は社労士に頼む?自社で申請する?判断の5つの質問と分担表」にまとめています。
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金は最大75%|人材開発支援助成金の対象条件・申請の流れを解説」へ(制度の全体像と助成率)
AI研修の助成金申請に関するよくある質問
AI研修の助成金は電子申請できますか?
できます。厚生労働省の雇用関係助成金ポータルから、計画届・変更届・支給申請を出せます。利用するにはGビズIDの取得が必要です。計画届を紙で出した場合、そのあとの変更届と支給申請は電子申請できません。
助成金の申請書類はどこでダウンロードできますか?
厚生労働省の事業展開等リスキリング支援コースのページに、様式と記載例、計画届時・支給申請時に必要な書類の一覧が掲載されています。支給申請では、計画届を出した日時点の様式を使います。
計画届はいつまでに出せばいいですか?
研修開始日の6か月前から1か月前までです。7月1日開始なら、1月1日から6月1日までに管轄の労働局へ出します。郵送の場合は労働局に届いた日が提出日になるので、余裕をもって送ってください。
支給申請の期限を過ぎてしまったらどうなりますか?
支給申請は、研修の最終日の翌日から2か月以内と定められており、厚生労働省も「厳守」としています。期限を過ぎると助成を受けられないと考えて、研修の最終日が近づいたら、出勤簿・賃金台帳・領収書などを先にそろえておいてください。
※助成金の要件・様式・提出書類は改正されることがあります。最新の内容は厚生労働省の人材開発支援助成金のページ、または管轄の都道府県労働局でご確認ください。
まとめ:助成金の申請は、研修を決めた日に4段階の締め切りを書き出すことから
AI研修の助成金の申請は、社内準備、研修開始日の6か月前から1か月前までの計画届、受講中の記録づくり、研修の最終日の翌日から2か月以内の支給申請、の4段階です。書類は多いですが、どれも「いつまでに、誰が用意するか」が決まれば進められます。研修を決めたら、まず開始日から逆算して計画届と支給申請の締め切りを書き出し、研修会社に用意してもらう書類を契約前に確認してください。
「書類の一覧を見ても、自社で進められるか不安」「研修を始めたい時期から逆算すると、計画届に間に合うか分からない」という場合は、無料相談で状況をお聞かせください。助成金を使わない方がよい場合や、自社で進められる場合も、その旨を正直にお伝えします。