この記事は、社員にAI研修を受けさせたい中小企業の社長・総務担当者の、「助成金の条件を読んでも、うちの会社と社員が当てはまるのか判断できない」という困りごとを解決するために、私がこれまで助成金を使った研修のお手伝いで見てきたことをまとめたものです。
📌AI研修の助成金の全体像(対象確認・研修選び・金額・日程・社労士・申請の6つの順番)は「AI研修の助成金 完全ガイド」にまとめています。
結論:AI研修で人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)を使えるかどうかは、①会社が雇用保険の適用事業所で、受講する社員が雇用保険に入っていること、②研修がOFF-JTで実訓練10時間以上(eラーニングは標準学習時間10時間以上または標準学習期間1か月以上)であること、③研修開始日の6か月前から1か月前までに計画届を出すこと、の3つでほぼ決まります。条件を満たせば、中小企業は研修経費の75%が助成されます(大企業は60%)。
厚生労働省の支給要領は100ページを超えていて、どこに自社に関係する条件が書いてあるのかを探すだけで大変です。そこでこの記事では、契約や申し込みの前に社内で確かめておくべき条件を、会社・社員・研修・時期の4つに分けた15項目のチェックリストにしました。1項目ずつ「はい」「いいえ」で答えてください。全部「はい」なら、助成金を前提に研修を計画して大丈夫です。
数字と条件は、厚生労働省「人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース 支給要領」(令和8年8月3日以降に計画届を出す分に適用される版)をもとにしています。
まず結論:助成金が使えない会社は、実はほとんどありません
ホリエモンAI学校では、これまで約300〜350件の助成金申請を、顧問の社労士と一緒にお手伝いしてきました。その中で、条件に当てはまらずに使えなかった会社は1社だけです。社労士との面談の段階で、制度上対象外になる業種だと分かりました。
私がご相談のときにいつもお伝えしているのは、「当てはまらないのは、雇用保険に入っている社員が一人もいない会社だけです」ということです。正社員でなくても、パートさんが雇用保険に入っていればその方は対象になり得ます。
つまり、多くの会社にとって問題は「当てはまるかどうか」よりも、「当てはまるのに、手順や時期を外して使えなくなること」です。下のチェックリストの後半(研修の条件・時期の条件)を特に丁寧に確認してください。
AI研修の助成金の条件チェックリスト(15項目)
次の15項目を、研修会社と契約する前に確認してください。「いいえ」が1つでもあれば、その項目の下の説明を読み、契約の前に手を打ちます。
会社の条件(5項目)
- 1. 会社が雇用保険の適用事業所である(雇用保険に入っている社員が1人以上いる)
- 2. 職業能力開発推進者を選任している(社内で研修の窓口になる人を1人決める。中小企業では総務担当者や社長が兼ねることが多い)
- 3. 事業内職業能力開発計画を作り、社員に周知している(会社として社員をどう育てるかの方針。労働組合や社員代表の意見を聞いて作る)
- 4. 研修の費用を会社が全額負担する(社員に一部を負担させたり、個人で申し込ませて後から精算したりしない)
- 5. 研修を受けている時間の賃金をきちんと払う(eラーニングでも、業務として受けさせる研修は労働時間なので賃金が必要)
1〜3は、まだ準備していない会社がほとんどです。ただ、2と3は社内で決めて書面にすれば済むことなので、「いいえ」でも助成金をあきらめる理由にはなりません。4と5は、後から直せない項目です。特に「社員が自分で申し込んで、会社が経費で精算する」形にすると、会社が計画して受けさせた研修にならず、助成の対象にしにくくなります。会社の研修にするなら、最初から会社名義で申し込んでください。
受講する社員の条件(3項目)
- 6. 受講する社員が、雇用保険の被保険者である(雇用形態の名前ではなく、雇用保険に入っているかで決まる)
- 7. 研修の期間中も、雇用保険の被保険者のままでいる見込みである(研修途中で退職・異動の予定がない)
- 8. 最後まで受講できる時間を確保できる(集合研修・ライブ研修は実訓練時間の8割以上の出席、eラーニングは期間内の修了が必要)
社長・役員や業務委託の方は、雇用保険の被保険者でないのが一般的なので、受講者に入れても助成の対象にはならないと考えて予算を組んでください。
7と8は、私たちのお手伝いでも実際に影響が出たところです。これまで不支給になった会社はありませんが、減額になった会社が2社ありました。どちらも研修の途中で社員の方が退職し、その方の受講が終わらなかったケースです。受講者を選ぶときは、「AIに一番興味がある人」だけでなく、「研修期間中に辞める予定がなく、受講時間を確保できる人」かどうかも確かめてください。
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金が不支給・減額になる10の失敗例|時期別の防ぎ方と途中で気づいたときの立て直し方」へ(退職・欠席・期限切れなどで不支給や減額になるパターンと、途中で気づいたときの立て直し方)
研修の条件(4項目)
- 9. 通常の仕事の場を離れて受ける研修(OFF-JT)である(営業同行や現場での実習のような、普段の業務と区別できないものは対象外)
- 10. 1コースの長さが条件を満たしている(集合研修・ライブ研修は実訓練時間10時間以上、eラーニングは標準学習時間10時間以上または標準学習期間1か月以上)
- 11. 研修の内容が、社員の職務とつながっていて、会社のデジタル化・DX化(または新しい事業の展開)に必要なものである
- 12. 会社が業務として受けさせる研修である(社員が自発的に受けるものは、このコースの対象外)
11は、AI研修であれば満たしやすい項目です。ただし、「ChatGPTの便利な使い方を一通り知る」だけの研修だと、どの業務のデジタル化のためなのかを計画に書きにくくなります。計画書に「どの部署の、どの業務を、AIでどう変えるために受けさせるのか」を書ける研修を選んでください。私たちが研修の最初に、受講者に自分の業務を四角と矢印で書き出してもらい、面倒な作業を5つ挙げてもらうのは、研修の目的を業務に結びつけるためでもあります。
📌詳しくは「【2026年最新】生成AI研修の内容とは?何をどの順で学ぶか|5段階のカリキュラム例と自社に合わせる方法」へ(業務につながる研修の中身の組み方)
📌AIのソフトやクラウドの費用は研修の助成金ではなく補助金の対象です。違いと使い分けは「AI導入の補助金と助成金の違い」へ
時期と手続きの条件(3項目)
- 13. 研修開始日の6か月前から1か月前までに、計画届を労働局へ出せる(例:7月1日開始なら、1月1日から6月1日までに提出)
- 14. 受講の記録(出席・学習の履歴)と、費用・賃金を払った記録を残せる
- 15. 研修が終わった翌日から2か月以内に、支給申請を出せる
一番多い失敗は13です。「来月から研修を始めたい」という時点では、すでに計画届の提出期限(開始日の1か月前)を過ぎていることがあります。その場合は、研修の開始日を後ろにずらして計画届を間に合わせるか、助成金を使わずに始めるかを選ぶことになります。研修会社と契約する前に、まず開始日から逆算して計画届の締め切りを確かめてください。
14と15は、研修が終わってから慌てやすいところです。ご相談に来る会社の多くが、「受講前の計画書」「受講中の受講履歴」「受講後の申請」「申請後の労働局からの問い合わせへの回答」のすべての段階で手間取っています。eラーニングの場合は、受講者ごとの学習履歴が後から出せるかを、研修会社に契約前に確認しておくと安心です。
「いいえ」があったときの対処法
チェックで「いいえ」がついても、多くは契約前なら手を打てます。よくある「いいえ」と、次にやることをまとめます。
- 2・3が「いいえ」(推進者・計画がない):社内で職業能力開発推進者を1人決め、事業内職業能力開発計画を作って社員に周知します。計画届を出す前に済ませておけば間に合います。
- 6が「いいえ」(受けさせたい人が雇用保険に入っていない):その方の分は助成金を当てにせず予算を組みます。社長や役員が学ぶ分は、助成金とは別に考えてください。
- 8が「いいえ」(受講時間を確保できるか不安):受講者を、時間を確保できる人に絞ります。業務時間内に受講する時間を、上司が先に予定に入れておくと続きやすくなります。
- 10が「いいえ」(研修が短い):数時間のセミナー1回だけでは条件に届きません。10時間以上のコースか、1か月以上の期間で学ぶeラーニングを選びます。
- 13が「いいえ」(開始日まで1か月を切っている):開始日を後ろにずらすのが基本です。急ぐ理由がなければ、助成金のために1〜2か月待つ方が、会社の負担は大きく減ります。
なお、助成額は、中小企業の場合で研修経費の75%です。集合研修やライブ研修では、これに加えて受講時間1時間あたり1,000円の賃金助成があります(大企業は経費の60%、賃金助成は1時間あたり500円)。eラーニングと通信制の研修は、賃金助成の対象外で、経費助成だけになります。1人あたりの上限額や自己負担の具体的な計算方法は、「AI研修の助成金はいくら?経費助成75%と上限額・賃金助成の計算方法」で計算例とあわせて説明しています。
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の費用相場は1人1〜10万円|30名での総額試算と助成金後の実質負担」へ(助成金を使ったときの実質負担の計算)
条件を確認するときに、研修会社へ聞くべき3つのこと
条件の多くは会社側で確かめるものですが、研修の条件(9〜12)と記録(14)は、研修会社の作りで決まります。契約の前に、次の3つを聞いてください。
- このコースの実訓練時間(または標準学習時間・学習期間)は何時間ですか?:10時間以上か、1か月以上かを数字で確認します。
- 受講者ごとの出席や学習の履歴を、後から出してもらえますか?:支給申請で受講の事実を示すために必要です。
- 助成金の計画書づくりや申請を、社労士と一緒に支援してもらえますか?:自社で進めることもできますが、慣れていないと書類の作り直しに時間がかかります。
ホリエモンAI学校では、研修の中身の相談と並行して、顧問の社労士が助成金の要件確認と書類づくりをお手伝いしています。もちろん、管轄の労働局や、お付き合いのある社労士に相談しながら自社で進めることもできます。
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金は個人でも使える?個人は給付金20〜80%・法人は最大75%|立場別の見分け方」へ(個人の給付金と法人の助成金の違い)
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金は最大75%|人材開発支援助成金の対象条件・申請の流れを解説」へ(制度の全体像と申請の流れ)
📌詳しくは「【2026年最新】AI研修の助成金申請の流れと必要書類|計画届から支給申請まで4段階で「いつ・何を・誰が」出すか」へ(条件を確認したあと、段階ごとに出す書類と締め切り)
AI研修の助成金の条件に関するよくある質問
パートやアルバイトの社員にAI研修を受けさせても、助成金の対象になりますか?
雇用保険に入っているパート・アルバイトの社員であれば、対象になり得ます。正社員かどうかではなく、雇用保険の被保険者かどうかで判断されます。まず、受けさせたい社員の加入状況を確認してください。
社員数が少ない会社でも、AI研修の助成金は使えますか?
使えます。人数の下限ではなく、会社が雇用保険の適用事業所で、受講する社員が雇用保険に入っていることが条件です。社員数が数名の会社でも、条件を満たせば中小企業として研修経費の75%が助成されます。
オンラインやeラーニングのAI研修でも、助成金の条件を満たせますか?
満たせます。リアルタイムで講師とやりとりする研修は実訓練時間10時間以上、eラーニングは標準学習時間10時間以上または標準学習期間1か月以上が条件です。ただし、eラーニングは賃金助成の対象外で、期間内に修了することが必要です。
研修を申し込んだ後から、助成金を申請することはできますか?
研修が始まった後からでは間に合いません。計画届は研修開始日の6か月前から1か月前までに出す必要があります。申し込みと開始日を決める前に、計画届の締め切りに間に合うかを確認してください。
※助成金の要件・助成率・様式は改正されることがあります。最新の内容は厚生労働省の人材開発支援助成金のページ、または管轄の都道府県労働局でご確認ください。
まとめ:AI研修の助成金は「条件」より「時期と記録」で失敗する
AI研修の助成金は、会社が雇用保険の適用事業所で、受講する社員が雇用保険に入っていれば、ほとんどの会社が対象になり得ます。そのうえで、研修がOFF-JTで10時間以上(eラーニングは10時間以上または1か月以上)あること、開始日の6か月前から1か月前までに計画届を出すこと、受講の記録を残して終了後2か月以内に申請することを守れば、中小企業は研修経費の75%の助成を受けられます。契約の前に、この記事の15項目を1つずつ確認してください。
「チェックしてみたが、自社が当てはまるのか判断がつかない」「研修を始めたい時期から逆算すると、計画届に間に合うか不安」という場合は、無料相談で状況をお聞かせください。助成金を使わない方がよい場合や、自社で進められる場合も、その旨を正直にお伝えします。