【2026年最新】人材派遣会社のAI活用|応募対応の転記・勤怠から給与と請求を作る照合を減らす進め方と3つの解決策

この記事は、社員30〜100名ほどの人材派遣会社の社長・営業(コーディネーター)・事務の方の、「応募者への連絡と登録の転記、派遣スタッフの勤怠から給与と請求を作る照合に追われて、スタッフや派遣先と向き合う時間が取れない」という困りごとを解決するために、私がこれまで400社・4,000人の研修で見てきたことをまとめたものです。

結論:人材派遣会社のAI活用は、「人材業界向けのAIマッチングシステム選び」から始めるのではなく、オーダーの受付から求人・応募対応・マッチング・就業中の勤怠・給与と請求までを四角と矢印で書き出し、「ワークフロー自動化」「AIエージェント」「コーディングエージェントで自社ツールを作る」の3つから解決策を選ぶと進みます。最初の1つは、応募から登録面談の予約までの連絡と転記、または月末の勤怠から給与と請求を作る照合のどちらか、毎月いちばん時間を取られている方がおすすめです。

📌ほかの業種も含めた全体像は「業種別のAI活用事例ガイド|中小企業は「業種」より「業務」で探す」で、10業種の最初の1つを早見表にまとめています。

最初にお伝えしておくと、ホリエモンAI学校は人材派遣に特化した会社ではありません。派遣先との関係やスタッフの気持ち、派遣の実務は皆さんの方がはるかに詳しいので、私たちがお手伝いするのは、どの業種でも同じ「困りごとを書き出して、業務を分解して、自動化する」部分です。この記事では、その進め方を派遣会社の業務に当てはめて説明します。


派遣会社の事務が重くなりやすい理由:1つの仕事に「相手が2人」いる

派遣の仕事は、派遣先の企業と派遣スタッフの両方を相手にします。1人のスタッフが就業すると、派遣先とは契約・勤怠の確認・請求のやり取りが、スタッフとは就業条件の連絡・勤怠の回収・給与のやり取りが発生します。同じ勤怠データから、スタッフの給与と派遣先への請求の2つを作るので、転記と突き合わせが毎月2倍になりやすいのです。

私が面談で聞く困りごとで、業種を問わず特に多いのが、この「何かと何かのデータを突き合わせる」照合の仕事です。銀行の入出金データと手元のExcelを一つずつ照合している、というような作業は本当に多く、派遣会社の勤怠・給与・請求の照合はその典型です。


受講企業から実際に出ている「人材まわり」の困りごと

ホリエモンAI学校では、受講企業と「困りごとリスト」を共有し、社員の方に自分の業務で面倒なことを書いてもらっています。業種を問わず集まった1,705件の中には、応募者対応や勤怠にかかわる、派遣会社にもそのまま当てはまる声があります。

  • 時間外の求人応募者へ自動対応したい
  • 応募者集めから面接予約まで自動化したい
  • 応募情報をスプレッドシートや管理ツールへ自動入力したい
  • 求人票の文章を媒体別に自動作成したい
  • 勤怠データを給与用に自動変換したい
  • 勤怠PDFの集計を自動化したい

件数で見ると、業種を問わず「採用・応募者対応と応募データ管理に手間がかかる」が25件、「勤怠管理・打刻・集計に手間がかかる」が27件、「同じ内容を複数の台帳・システムへ二重入力している」が22件、「請求書の作成・発行・送付が毎月手間」が21件出ています。派遣会社は、ほかの会社なら年に数回の採用や月1回の勤怠締めを、スタッフの人数分、毎週・毎月くり返している会社だと言えます。

私が面談でよくお伝えするのは、「業種は関係ありません」ということです。その人がどんな仕事をしているかをワークフローに棚卸しして、困りごとを5個ぐらい出してもらい、その困りごとをワークフロー自動化で解決するか、AIエージェントに任せるか、コーディングエージェントでツールを作るかを考える。この順番は、派遣会社でも製造業でも同じです。


オーダーから請求までを四角と矢印で書き出す

中小の派遣会社では、コーディネーターや事務の1か月が、たとえば次のような流れになっていないでしょうか。

  1. 派遣先からオーダーが電話・メールで届き、条件をメモして社内の一覧に入れる
  2. 求人票を書き、複数の求人媒体や自社サイトに、媒体ごとに書き直して載せる
  3. 媒体ごとに届く応募を確認し、応募者に電話やSMSで連絡して登録面談の日程を決め、応募者の情報を管理表に写す
  4. 登録スタッフの中から条件に合う人を探し、1人ずつ電話で打診する
  5. 就業が決まったら、就業条件の明示などの書類を作り、スタッフと派遣先に送る
  6. 月末にスタッフのタイムシートや勤怠データを集め、紙・PDF・派遣先のシステムなど形式の違うものを給与用と請求用の表に写す
  7. 給与と請求の金額が合っているか、残業や欠勤の扱いを突き合わせて確認し、請求書を送る

書き出すと、コーディネーターの時間は、4の「人と人をつなぐ」よりも、3の「連絡して写す」と6・7の「集めて写して突き合わせる」に消えていることが分かります。私がいつも感じるのは、口では「そんなに時間はかかっていない」と言っていた作業ほど、文字で書き出すと実はめちゃくちゃ時間をかけていた、ということです。1日に何十回も応募の通知を確認しているなら、1回数分でも、それだけで1〜2時間が消えています。

そこで、最初に手をつけるのは「つなぐ」ではなく「写す」と「突き合わせる」です。たとえば応募対応なら、次の形にします。

  1. 媒体ごとに届く応募の通知メールを、1つのメールアドレスやフォルダに集める
  2. AIが通知メールを読み、氏名・連絡先・希望の職種や勤務地・応募した求人を管理表に自動で書き込む
  3. 応募者には、夜間や休日でもすぐに、登録面談の予約ページを案内するメールやSMSを自動で送る
  4. 予約が入ったら担当コーディネーターのカレンダーとチャットに通知し、読み取れなかった応募や予約が入らない応募だけを「要確認」として人に回す

ここで大事なのは、最初から100%の自動化を目指さないことです。8〜9割をAIと自動化に任せて、例外は人が対応すればいい。そう割り切ると、仕組みはずっと早く動き出します。

📌形式の違う書類やFAXを一覧に写す作業を減らす考え方は「中小の物流・運送会社のAI活用|配車表づくり・FAXの配送依頼・ドライバー日報の手間を減らす進め方」でも紹介しています。


3つの解決策の選び方(派遣会社の例)

書き出した作業は、次の3つのどれかで解決します。選ぶ観点は3つで、頻度(毎日か、月に一度か)、判断の要否(毎回同じ手順なら、AIを使わない自動化で十分)、そして社内で使っているツールの「派閥」(Microsoft・Googleなど)です。

解決策向いている作業派遣会社での例
ワークフロー自動化毎回同じ手順で、判断が要らない作業応募があったら予約ページの案内を自動送信する/面談の予約が入ったら担当者に通知する/勤怠の締め日前に未提出のスタッフへリマインドを送る
AIエージェント文章や表を読む・突き合わせる・下書きする作業媒体ごとに形式の違う応募通知を読んで管理表に書き込む/オーダーの条件から媒体別の求人票の下書きを作る/形式の違うタイムシートを読み取り、給与用と請求用の数字のずれを洗い出す
コーディングエージェントで自社ツール作成既存のツールでは自社の条件に合わない作業派遣先ごとの単価・残業の扱い・締め日を入れて、勤怠から給与と請求の一覧を同時に作るツールを作る/登録スタッフの希望条件とオーダーを並べて、打診する順番の案を出す画面を作る

なお、使っている会社のツールによって、選べる方法は変わります。Microsoft 365だけで仕事をしている会社なら、Power Automateでのワークフロー自動化だけでも、Outlookに届く応募メールからExcelの管理表、Teamsへの通知までのつなぎ込みはかなりできます。

📌毎月くり返す「照合」をAIに任せる考え方は「不動産会社のAI活用|家賃の入金照合・物件問い合わせ・重説チェックの手間を減らす進め方」、顧客ごとに形式の違う資料を回収・入力する例は「税理士事務所・社労士事務所のAI活用|顧問先ごとに毎月くり返す回収・入力・照合を減らす進め方」でも説明しています。


マッチングは「ベテランの頭の中の条件」を書き出してから

マッチングそのものをAIで自動化したい、という相談もあります。大手では、アデコ株式会社が、担当者が手作業で行っていたマッチング業務の一部を自動化する独自のシステムの運用を始め、派遣登録者と企業のマッチングにかかる時間を年間78,800時間削減する見込みだと発表しています(出典:アデコ株式会社 プレスリリース(2024年12月3日)、公開事例。数字は実績ではなく見込み)。

中小の派遣会社で同じ規模の仕組みは要りませんが、考え方は使えます。ベテランのコーディネーターは、「この派遣先は、資格より電話の受け答えを重視する」「このスタッフは駅から遠い職場だと続かない」といった、管理表に書かれていない条件をたくさん頭の中で判断しています。市販のマッチングサービスを先に選ぶと、この条件が抜けて、結局ベテランが手で選び直すことになりがちです。

私たちがシフト作成の自動化をお手伝いしたときも同じでした。どうシフトを作っているかを聞きながら全部ワークフローにし、それをChatGPTやClaudeに読み込ませて仕様書を作り、Claude CodeやCodexで最低限使える試作品を作って、使いながら直していきました。面白かったのは、「田中さんと鈴木さんは仲が悪いから同じシフトに入れない」のような、普通のシフト管理ツールではできない、職人が判断していた条件もちゃんと入ったことです。マッチングでも、ベテランが気にしている条件を話してもらって書き出し、AIには「打診する順番の案」を出させ、ベテランが直した箇所を新しい条件として足していく。この繰り返しで、ベテランの判断を少しずつ会社の仕組みに移していけます。

1つ注意があります。労働者派遣法では、紹介予定派遣を除き、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為(事前の面接や履歴書の送付など)をしないよう求めています(出典:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」第26条)。AIで候補を絞り込む仕組みを作っても、それは派遣元が誰に打診するかを決めるための社内の道具として使い、候補者の一覧や履歴書を派遣先に選ばせる使い方にはしないでください。判断に迷う使い方は、顧問の社会保険労務士などの専門家に確認してから仕組みにするのが安全です。

📌「表に書かれていない条件」をAIに守らせる手順は「介護施設のシフト作成をAIで自動化する方法|Geminiで条件を守ったシフト案を作る3ステップ」が参考になります。マッチングも、考え方は同じです。


スタッフの個人情報をどこまでAIに入れるかを先に決める

派遣会社が扱う情報の多くは、登録スタッフの氏名・連絡先・職歴・勤怠・給与といった個人情報です。ここをあいまいにしたまま社員が思い思いにAIを使い始めるのが、いちばん危ない進め方です。

私は、セキュリティの強さで3つの段階があるとお伝えしています。一番高いのは社内のパソコンの中だけで動くAI(ローカルLLM)、二番目はMicrosoftの環境の中だけで完結させる方法、三つ目が法人向けのChatGPTやClaudeなどを使う方法です。漏れるとしても、多くはAIのせいではなく、ソフトの更新をしていない、管理する人がいないといった一般的な原因です。必要以上に怖がる必要はありませんが、会社として「どのサービスを、どの設定で、どの情報まで入れてよいか」を決めてから始めてください。決まるまでは、個人情報を含まない作業(求人票の下書き、社内マニュアル、派遣先ごとの請求ルールの整理など)から始めるのが安全です。


最初の1か月の進め方

  1. 1週目:コーディネーター・営業・給与と請求の担当に、自分の仕事を四角と矢印で書いてもらい、面倒な作業を5個ずつ挙げてもらう
  2. 2週目:挙がった困りごとを、頻度(毎日・毎月)と件数で並べ、1つに絞る。迷ったら毎日発生する応募対応の転記か、毎月の勤怠から給与と請求を作る照合
  3. 3週目:選んだ作業をChatGPTやClaudeと壁打ちして「何を読み込み、何を出力し、どこで人が確認するか」の仕様書を作り、3つの解決策のどれで作るかを決める。あわせて、どの情報をAIに入れてよいかの社内ルールを決める
  4. 4週目:最低限動く試作品を作り、実際の1〜2週間分の応募、または1か月分の勤怠で試す。読み取れなかったものの出方を見て、人が確認する範囲を決める

よくある質問

中小の人材派遣会社はAIで何から始めればいいですか?

毎日または毎月くり返し、手順がほぼ決まっている作業から始めるのがおすすめです。代表例は、媒体ごとに届く応募を管理表に写して登録面談の予約を案内する作業と、月末に勤怠から給与と請求の一覧を作って突き合わせる作業です。どちらに時間を取られているかを書き出して、多い方から始めてください。

AIのマッチングシステムを先に入れた方がいいですか?

先に、ベテランのコーディネーターが打診先を選ぶときに気にしている条件を書き出すことをおすすめします。条件が書き出せていれば、市販のサービスで足りるのか、自社用のツールを作るべきかを判断できます。また、AIで絞り込んだ候補を派遣先に選ばせる使い方は、労働者派遣法上の問題につながるおそれがあるので避けてください。

派遣スタッフの個人情報をAIに入れても大丈夫ですか?

入力した内容が学習に使われない法人向けのサービスや、社内のMicrosoft環境の中で完結する仕組みを使い、どの情報まで入れてよいかを会社として決めてから扱うのが前提です。ルールが決まるまでは、個人情報を含まない求人票の下書きやマニュアル作りから始めると安全です。


まとめ

人材派遣会社のAI活用は、人材業界向けのシステムを探すことからではなく、応募対応の連絡と転記、勤怠から給与と請求を作る照合といった、毎日・毎月くり返している事務作業を書き出すことから始まります。業務を四角と矢印に分解し、ワークフロー自動化・AIエージェント・自社ツール作成の3つから解決策を選び、8〜9割をAIに任せて例外と最終判断は人が行う。そうして空いた時間を、スタッフの相談に乗ることや派遣先との関係づくりという、人にしかできない仕事に使ってください。

📌AI研修の選び方・進め方の全体像は「法人向けAI研修の完全ガイド|7つの順番で決める進め方と費用・形式・定着まで10記事で解説」へ

「応募対応や勤怠・給与・請求の事務に追われて、どこから自動化すればいいか分からない」「社員にAIを使わせたいが、進められる人が社内にいない」という状況なら、ご相談ください。ホリエモンAI学校の法人プランでは、毎月の面談で社内の困りごとリストを一緒に整理し、どの方法で解決するかまで伴走します。派遣の実務は皆さんの方が詳しいので、私たちは業務の分解と自動化の方法をお手伝いします。

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