【2026年最新】中小の物流・運送会社のAI活用|配車表づくり・FAXの配送依頼・ドライバー日報の手間を減らす進め方と3つの解決策

この記事は、社員30〜100名ほどの運送会社や、自社で配送部門を持つ卸・製造業の社長・配車担当・事務の方の、「配車表づくりや配送依頼の転記、ドライバーの日報の取りまとめが、ベテラン1人の頭と手作業に頼っていて、その人が休むと回らない」という困りごとを解決するために、私がこれまで400社・4,000人の研修で見てきたことをまとめたものです。

結論:中小の物流・運送会社のAI活用は、「物流向けのAIシステム選び」から始めるのではなく、配車表づくり、FAXや電話で届く配送依頼の転記、ドライバーの日報といった毎日くり返す事務作業を四角と矢印で書き出し、「ワークフロー自動化」「AIエージェント」「コーディングエージェントで自社ツールを作る」の3つから解決策を選ぶと進みます。最初の1つは、配送依頼を受けて配車表に載せるまでの「転記」がおすすめです。

📌ほかの業種も含めた全体像は「業種別のAI活用事例ガイド|中小企業は「業種」より「業務」で探す」で、10業種の最初の1つを早見表にまとめています。

最初にお伝えしておくと、ホリエモンAI学校は物流に特化した会社ではありません。運行や荷主との関係、車両の事情は皆さんの方がはるかに詳しいので、私たちがお手伝いするのは、どの業種でも同じ「困りごとを書き出して、業務を分解して、自動化する」部分です。この記事では、その進め方を運送・配送の事務に当てはめて説明します。


なぜ今、運送会社の「事務」から手をつけるのか

2024年4月から、トラックドライバーなど自動車運転者の時間外労働の上限は、原則月45時間・年360時間、臨時的な特別の事情がある場合でも年960時間になりました(出典:厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」)。運べる時間に上限がある以上、配車の組み方や、出発前後の連絡・書類の時間を減らすことの重みが増しています。

ただし、AIを入れればドライバー不足や運行時間の問題が解決する、という話ではありません。AIで減らせるのは、配車担当や事務の方がパソコンと紙と電話の間で行き来している時間です。そこが減れば、配車担当が運行の調整や荷主との交渉という「人にしかできない仕事」に時間を使えるようになります。この記事はその部分の話です。


物流・配送の現場から実際に出ている困りごと

ホリエモンAI学校では、受講企業と「困りごとリスト」を共有し、社員の方に自分の業務で面倒なことを書いてもらっています。業種を問わず集まった1,705件の中には、配送や配車にかかわる困りごととして、次のような声があります。

  • 配車表の作成に時間がかかる/作成・確認に手間がかかる
  • 配送ルートを毎日考えるのが大変
  • 配送スケジュールの計算に手間がかかる
  • 配送予定表の更新ミスを減らしたい
  • 配送依頼書や請求書のFAX対応に手間がかかる
  • 来訪・配送の連絡対応が負担

そして、これらは運送会社だけの悩みではありません。業種を問わず「配車・配送ルート・送迎表の作成が大変」は11件、「FAXの仕分け・転記・デジタル化が手間」は12件、「日報・日誌・作業記録の入力に時間がかかる」は32件、「手書き・紙・PDFの内容をデータ入力している」は35件出ています。介護施設の送迎表や、営業の訪問ルートも、仕組みとしては配車と同じ問題です。

私が面談でよくお伝えするのは、「業種は関係ありません」ということです。その人がどんな仕事をしているかをワークフローに棚卸しして、困りごとを5個ぐらい出してもらい、その困りごとをワークフロー自動化で解決するか、AIエージェントに任せるか、コーディングエージェントでツールを作るかを考える。この順番は、運送会社でも製造業でも同じです。


配送依頼から配車表までを四角と矢印で書き出す

多くの運送会社で、配車担当の1日は「依頼を集めて、表に写して、組む」ことに追われています。たとえば、次のような流れになっていないでしょうか。

  1. 荷主から配送依頼がFAX・メール・電話・荷主のWebシステムでばらばらに届く
  2. FAXや電話の内容を、手書きのメモやExcelの受注一覧に写す
  3. 翌日分の依頼を集め、車両・ドライバー・時間指定・積み合わせを考えて配車表を組む
  4. 配車表を印刷したり、LINEや電話でドライバーに伝えたりする
  5. 当日の追加・キャンセル・時間変更のたびに、表とドライバーへの連絡を直す
  6. 運行後、日報や受領書を回収し、請求用の一覧にまとめる

書き出すと、配車担当の時間の多くは、3の「組む」よりも、2の「写す」と5の「直して連絡する」に消えていることが分かります。私がいつも感じるのは、口では「そんなに時間はかかっていない」と言っていた作業ほど、文字で書き出すと実はめちゃくちゃ時間をかけていた、ということです。

そこで、最初に手をつけるのは「組む」ではなく「写す」です。

  1. FAXは複合機でPDFにして共有フォルダへ、メールの依頼は専用のアドレスへ集める
  2. AIがPDFやメールを読み取り、荷主・届け先・品目・数量・指定日時を受注一覧に自動で書き込む
  3. 読み取れなかった項目や、いつもと違う依頼だけを「要確認」にして事務の方へ通知する
  4. 配車担当は、整った受注一覧を見て配車を組むことに集中する

ここで大事なのは、最初から100%の自動化を目指さないことです。営業時間外の留守電とFAXで受注していた、お酒の受発注をしている会社の自動化をお手伝いしたとき、困ったのは「言った言わない」でした。「いつもの焼酎を同じケースで」と言われても、AIには「いつもの」が分かりません。そこは人間でも判断できないので、翌日に電話で確認しています。人間が読めないFAXはAIも読めません。8〜9割をAIに任せて、残りは人が確認すればいい。そう割り切ると、FAXも電話もそれほど苦労しなくなります。


3つの解決策の選び方(運送会社の例)

書き出した作業は、次の3つのどれかで解決します。選ぶ観点は3つで、頻度(毎日か、月に一度か)、判断の要否(毎回同じ手順なら、AIを使わない自動化で十分)、そして社内で使っているツールの「派閥」(Microsoft・Googleなど)です。

解決策向いている作業運送会社での例
ワークフロー自動化毎回同じ手順で、判断が要らない作業配車表が確定したら各ドライバーにチャットで自動送信する/配送予定表を更新したら事務所の共有画面にも反映する/月末に運行データから請求用の一覧を自動で作る
AIエージェント文章や表を読む・突き合わせる・下書きする作業FAX・メールの配送依頼を読み取って受注一覧に書き込む/ドライバーの音声メモから日報を作る/受領書と配車表を突き合わせて、配達済みと未回収を洗い出す
コーディングエージェントで自社ツール作成既存のツールでは自社の条件に合わない作業車両の大きさ・ドライバーの免許・荷主ごとの決まりなど、自社の条件を入れた配車案を出すツールを作る/スマホから運行の開始・終了と荷物の状況を入力できる画面を作る

なお、使っている会社のツールによって、選べる方法は変わります。Microsoft 365だけで仕事をしている会社なら、Power Automateでのワークフロー自動化だけでも、メール・Excel・Teamsのつなぎ込みはかなりできます。どれを使うかの基準は、その会社のAI活用ガイドラインやセキュリティのルールがどの程度厳しいかです。

📌FAXや留守電で届く注文を受注データにする考え方は「小売業・卸売業のAI活用|受発注・在庫・売上予測の困りごとから始める進め方」でも紹介しています。毎月の勤怠から給与と請求を作る「転記と照合」を減らす例は「人材派遣会社のAI活用|応募対応の転記・勤怠から給与と請求を作る照合を減らす進め方」をご覧ください。


配車そのものは「ベテランの頭の中の条件」を書き出してから

配車を組む作業そのものを自動化したい、という相談もあります。ここで市販の配車システムやルート最適化のサービスを先に選ぶと、うまくいかないことがあります。ベテランの配車担当は、「この荷主の荷物は午前中に着けないと受け取ってもらえない」「この届け先は大型車が入れない」「この2つの荷物は同じ車に積まない」といった、表に書かれていない条件をたくさん頭の中で判断しているからです。

進め方は次の順番です。まず、配車担当に配車を組むときに気にしていることを話してもらい、条件を全部書き出します。その条件をChatGPTやClaudeに読み込ませて「この条件を守った配車案を出す仕組みを作りたい」と仕様書を作ってもらい、Claude CodeやCodexなどのコーディングエージェントで最低限動く試作品を作ります。実際の1週間分の依頼で配車案を出させ、ベテランが直した箇所を新しい条件として足していく。この繰り返しで、ベテランの判断を少しずつ社内の仕組みに移していきます。

この場合も、AIが出すのはあくまで「案」です。当日の道路事情や急な依頼への対応、最終的な配車の決定は配車担当が行う。この分担にしておくと、ベテランが休んだ日でも、ほかの人が案を見ながら配車を組めるようになります。

📌「表に書かれていない条件」をAIに守らせる手順は、介護施設のシフト作成を例にした「介護施設のシフト作成をAIで自動化する方法|Geminiで条件を守ったシフト案を作る3ステップ」が参考になります。配車も送迎表も、考え方は同じです。


ドライバーの日報は「話すだけ」にする

ドライバーは机でパソコンを使う仕事ではないので、運行後にスマホで文字を打って日報を書くのは大きな負担です。外回りの多い建築系の会社で、日報を音声にした例があります。話すだけでAIが文字起こしして文章を整え、元の音声と一緒に日報として残す仕組みで、とても喜ばれました。運送会社でも、「何時にどこを出て、どこで何を降ろし、何があったか」を話してもらえば、同じやり方で日報の下書きが作れます。

ただし、法令で決められた点呼の記録や運転日報の記載事項は、AIが作った下書きをそのまま提出するのではなく、決められた項目がそろっているかを人が確認してください。どの記録をどの形で残す必要があるかは、所属の協会や顧問の社会保険労務士などの専門家に確認したうえで仕組みを作るのが安全です。


拠点ごとのノウハウを探せるようにした公開事例

規模は大きく違いますが、物流を主な事業とする会社が「探せない」困りごとをAIで解決した公開事例があります。鴻池運輸株式会社では、拠点ごとにノウハウや検証結果がたまり、全社のデータベースにしても似た業務の知見を探しにくい状態でした。そこで社内の資料をAIに読み込ませて質問に答えさせる仕組み(RAG)を作り、検証した100件のうち95件が合格、データベースへの検索アクセスは従来の8倍近くになったと公表されています(出典:AWSブログ「鴻池運輸様におけるAWS生成AI事例」、公開事例)。

中小の運送会社なら、ここまで大きな仕組みは要りません。「この荷主の納品ルール」「この届け先の搬入口と注意点」をまとめた資料をChatGPTやClaudeのプロジェクト機能に入れておくだけでも、新人ドライバーや配車の代わりの人が、ベテランに聞かずに調べられるようになります。


最初の1か月の進め方

  1. 1週目:配車担当・事務・ドライバーの代表に、自分の仕事を四角と矢印で書いてもらい、面倒な作業を5個ずつ挙げてもらう
  2. 2週目:挙がった困りごとを、頻度(毎日・毎月)と件数で並べ、1つに絞る。迷ったら毎日発生する配送依頼の転記
  3. 3週目:選んだ作業をChatGPTやClaudeと壁打ちして「何を読み込み、何を出力し、どこで人が確認するか」の仕様書を作り、3つの解決策のどれで作るかを決める
  4. 4週目:最低限動く試作品を作り、1〜2週間分の実際の依頼で試す。読み取れなかったものの出方を見て、人が確認する範囲を決める

届け先の個人名や住所、荷主との取引条件を扱う作業は、どのAIサービスをどの設定で使うかを社内で決めてから始めてください。決まるまでは、個人情報や取引条件を含まない作業(社内マニュアル、荷主ごとの納品ルールの整理、日報の書き方の統一など)から始めるのが安全です。

📌業種が違っても進め方は同じです。外回りの多い現場の音声日報や紙の書類から始める例は「建設業・工務店のAI活用事例|現場の書類・写真・日報・見積から始める」、現場と事務所の往復を減らす例は「電気・設備工事のAI活用|現場と事務所の「写真・報告書・見積」の往復を減らす進め方」でも詳しく説明しています。


よくある質問

中小の運送会社はAIで何から始めればいいですか?

毎日発生し、手順がほぼ決まっている事務作業から始めるのがおすすめです。代表例は、FAXやメールで届く配送依頼を受注一覧や配車表に写す作業です。読み取れるものはAIに任せ、読み取れないものだけを人が確認する形にすると、効果が分かりやすく出ます。

配車システムやルート最適化のサービスを先に入れた方がいいですか?

先にベテランが配車で気にしている条件を書き出すことをおすすめします。条件が書き出せていれば、市販のサービスで足りるのか、自社用のツールを作るべきかを判断できます。書き出さずにサービスを入れると、表に書かれていない条件が抜けて、結局ベテランが手で直すことになりがちです。

ドライバーがスマホやAIに慣れていなくても使えますか?

ドライバーに新しい操作を覚えてもらうより、今のやり方に近い形を選ぶ方が定着します。日報なら「話すだけ」、配車の連絡なら「いつも使っているチャットに届くだけ」のように、ドライバー側の手順は増やさず、裏側の転記や整理をAIと自動化に任せるのがコツです。


まとめ

中小の物流・運送会社のAI活用は、物流向けのシステムを探すことからではなく、配送依頼の転記、配車表づくり、ドライバーの日報といった、毎日くり返している事務作業を書き出すことから始まります。業務を四角と矢印に分解し、ワークフロー自動化・AIエージェント・自社ツール作成の3つから解決策を選び、8〜9割をAIに任せて例外と最終判断は人が行う。この順番なら、ベテラン1人に頼っていた配車の仕事を、会社の仕組みに移していけます。

📌AI研修の選び方・進め方の全体像は「法人向けAI研修の完全ガイド|7つの順番で決める進め方と費用・形式・定着まで10記事で解説」へ

「配車や配送依頼の事務がベテラン頼みで、どこから自動化すればいいか分からない」「社員にAIを使わせたいが、進められる人が社内にいない」という状況なら、ご相談ください。ホリエモンAI学校の法人プランでは、毎月の面談で社内の困りごとリストを一緒に整理し、どの方法で解決するかまで伴走します。運送の実務は皆さんの方が詳しいので、私たちは業務の分解と自動化の方法をお手伝いします。

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