【2026年最新】税理士事務所・社労士事務所のAI活用|顧問先ごとに毎月くり返す回収・入力・照合・問い合わせを減らす進め方と3つの解決策

この記事は、税理士事務所・社労士事務所の所長や事務長の、「顧問先が増えるほど、資料の回収・入力・照合・問い合わせ対応が同じだけ増えて、繁忙期に職員が回らない。でも顧問先の情報をAIに入れていいのか分からない」という困りごとを解決するために、私がこれまで400社・4,000人の研修で見てきたことをまとめたものです。

結論:税理士事務所・社労士事務所のAI活用は、「顧問先1社ごとに毎月くり返している作業」を四角と矢印で書き出し、①資料の回収・催促、②証憑や勤怠データの読み取りと入力、③銀行データや前月との照合、④顧問先からの問い合わせ対応、の4つに分けると進みます。それぞれを「ワークフロー自動化」「AIエージェント」「コーディングエージェントで事務所専用のツールを作る」の3つから解決し、顧問先の情報をどの環境で扱うかは、守秘義務を前提に最初に決めます。

📌ほかの業種も含めた全体像は「業種別のAI活用事例ガイド|中小企業は「業種」より「業務」で探す」で、10業種の最初の1つを早見表にまとめています。

先にお伝えしておくと、ホリエモンAI学校は税務や労務の専門家ではありません。申告や手続きの中身は先生方の方がはるかに詳しいので、私たちがお手伝いするのは、どの業種でも同じ「困りごとを書き出して、業務を分解して、自動化する」部分です。この記事では、その進め方を士業事務所の業務に当てはめて説明します。


士業事務所のAI活用が止まる2つの理由

士業事務所でAIの話が進まない理由は、大きく2つあります。

1つ目は、顧問先の情報を預かる仕事だということです。税理士には税理士法で、開業社会保険労務士には社会保険労務士法で、業務で知り得た秘密を漏らしてはならない義務が定められています(出典:e-Gov法令検索「税理士法」第38条、e-Gov法令検索「社会保険労務士法」第21条)。私がこれまで「ローカルLLM(事務所の中のパソコンやサーバーだけで動かすAI)でないと解決できなかった困りごと」として真っ先に思い浮かぶのも、税理士とお医者さんの仕事です。顧客の情報を外に出せないのは、その事務所のITリテラシーの問題ではなく、業界の事情です。だからこそ「何となく不安だからAIは使わない」で止まりやすいのです。

2つ目は、ツールから入ってしまうことです。研修の現場でとても多いのが、「ChatGPTやGeminiの使い方は勉強したけれど、自分たちの業務改善と結びつかない」という声です。業務改善の方法は、ワークフロー自動化、AIエージェントに業務を任せる、コーディングエージェントでツールを作る、の3パターンしかありません。チャット型のAIに質問するだけではこの3つにつながらないので、「結局、仕事は楽にならなかった」となります。

この2つは、順番を変えれば両方とも解けます。先に業務を書き出し、顧問先の情報が出てくる場所を特定してから、使う環境と解決策を決めればいいのです。


顧問先の側も、同じ境目で困っている

ホリエモンAI学校では、受講企業と「困りごとリスト」を共有し、社員の方に自分の業務で面倒なことを書いてもらっています。業種を問わず集まった1,705件を見ると、士業事務所の仕事とちょうど重なる困りごとが並んでいます。

困りごと(困りごとリストでの分類)件数
受け取った請求書・証憑の取得・保存・管理が手間27件
入金確認・消込・残高照合に手間がかかる21件
仕訳入力・会計ソフトへの入力が手間20件
入退社・人事労務の書類作成と手続きが手間18件

個別の声を見ると、「銀行入出金の仕訳を自動化したい」「領収書撮影だけで仕訳まで済ませたい」「仕訳伝票と口座残高の照合を自動化したい」「年末調整の案内資料作成に手間がかかる」「給与計算に時間がかかる」といった内容です。中には「会計事務所とのやりとりがオンライン化されていない」という声もありました。

ここで大事なのは、これらを書いたのは主に顧問先側の会社の社員だということです。つまり、領収書を集めて渡す、勤怠を締めて送る、という事務所と顧問先の境目で、両側が同じように手間をかけています。事務所の中だけを効率化するより、この境目の受け渡しを自動化する方が、事務所にも顧問先にも効きます。


顧問先1社の「毎月の流れ」を四角と矢印で書く

どのAIを使うかを考える前に、まず業務を書き出します。私たちの研修では、社員の方に自分の仕事を四角と矢印で書いてもらい、その中で面倒な作業を5つほど箇条書きにしてもらっています。たとえば税理士事務所の記帳代行・月次の流れなら、次のようになります。

  1. 月初に、顧問先へ資料(領収書・請求書・通帳のコピーなど)を送ってもらうよう連絡する【回収】
  2. 届かない顧問先に、電話やメールで催促する【回収】
  3. 届いた紙・PDF・写真を読み、会計ソフトに仕訳を入力する【読み取り・入力】
  4. 通帳や銀行データと突き合わせ、合わない取引を探す【照合】
  5. 不明な取引を顧問先に確認する【問い合わせ】
  6. 月次の数字をまとめて、顧問先に報告する【報告】

社労士事務所の給与計算・手続きでも、形はほぼ同じです。勤怠データを回収し、給与ソフトに合う形に整え、前月と比べておかしな数字がないかを確かめ、入退社があれば必要書類を案内して手続きを進めます。

ポイントは、この流れが顧問先の数だけ毎月くり返されることです。たとえば1社あたり30分の催促でも、顧問先が60社あれば月30時間になります。書き出してみると、口では「そんなに時間はかかっていない」と言っていた作業ほど、実はめちゃくちゃ時間をかけていた、ということがよくあります。たとえば1日30回メールをチェックしている人は、1回3分でも90分が消えています。書くことで初めて、どこから手をつけるべきかが見えます。


4つの作業ごとに、3つの解決策から選ぶ

書き出した作業は、次の4つに分けると解決策を選びやすくなります。どれを選ぶかは、作業の頻度、人の判断が必要かどうか、事務所で使っているツールの種類で決めます。

作業よくある困りごと合いやすい解決策自動化のイメージ
①回収・催促資料が届かない、誰に催促したか分からなくなるワークフロー自動化締め日の前に未提出の顧問先だけへ自動で連絡し、共有フォルダやフォームに届いたら担当者に通知して、決まったファイル名で保存する
②読み取り・入力紙・PDF・写真の証憑を見ながら手で入力しているAIエージェント(会計・給与ソフトとつなぐ)AIが証憑を読み取って仕訳や入力の案を作り、担当者は確認して確定するだけにする
③照合銀行データと帳簿、今月と前月を一つずつ見比べているAIエージェント/コーディングエージェントAIが両方のデータを引っ張ってきて突き合わせ、合わないものだけを一覧にして人が見る
④問い合わせ顧問先から同じ質問が何度も来るAIエージェント(事務所の資料をもとに回答案を作る)事務所の案内資料や過去の回答を読み込ませて回答の下書きを作り、担当者が直して送る

②と③は、AIエージェントと会計ソフトをつなげると一気に進みます。たとえばClaude Codeと会計freeeのような会計ソフトをつなげれば、「仕訳して」「集計して」「仕訳表を作って」「キャッシュフローを出して」といった指示で、仕訳から試算表のような資料づくりまでAIに任せられます。

ここで最初から100%を目指さないことが大切です。手書きでかすれた領収書のように、人間が読めないものはAIも読めません。8〜9割をAIが処理し、残りの例外は人が確認する、という分担で十分に効果が出ます。

事務所独自のやり方がある作業、たとえば「この顧問先は勤怠をこの形式で送ってくるので、給与ソフトに合う形に直してから取り込む」といった作業は、市販のツールでは合わないことがあります。その場合は、困っていることを全部書き出してChatGPTやClaudeに読み込ませ、「これを解決するツールを作りたい」と仕様書を作ってもらい、その仕様書をClaude CodeやCodexのようなコーディングエージェントに渡して、最低限使える試作品を作ります。使いながら「ここを変えたい」を足していけば、事務所専用のツールになります。

📌銀行の入金データとExcelを突き合わせる「照合」の自動化は、「不動産会社のAI活用|家賃の入金照合・物件問い合わせ・重説チェックの手間を減らす進め方と3つの解決策」でも具体的に説明しています。


顧問先の情報を、どの環境で扱うかを先に決める

4つの作業のうち、ほとんどは顧問先の情報を扱います。ここは「AIを使うか、使わないか」ではなく、「どの環境で使うか」で考えます。私は受講企業にいつも「会社の環境次第です」とお伝えしていて、安全性の高い順に次の3つがあります。

  1. ローカルLLM:事務所の中のパソコンやサーバーだけでAIを動かし、データを外に出さない
  2. Microsoftの環境の中だけで使う:Microsoft 365の外とはつながず、外部サービスとの連携もしない
  3. 普段使いのChatGPTやClaudeなど:法人向けの契約や設定を確認したうえで使う

どれを選ぶかは、顧問先との契約や事務所の規程と照らして所長が決めます。決まるまでの間も、顧問先の情報を使わない作業はすぐに始められます。事務所内のマニュアル・手順書、顧問先への案内文のひな形、年末調整の案内資料の下書き、求人原稿などです。環境の選び方は、同じく守秘性の高い医療機関向けに「クリニックのAI活用|患者情報を守りながら問診・カルテ・事務の手間を減らす進め方と3つの解決策」で詳しく書いているので、あわせてご覧ください。


事務所で始める3ステップ

  1. 所内の全員が、自分の1週間の仕事を四角と矢印で書き、面倒な作業を5つ挙げる(書けない人は、所長や担当者が「普段どんな仕事をしていますか」「面倒な仕事を5つ教えてください」と聞き取れば十分です)
  2. 挙がった作業を①回収②読み取り・入力③照合④問い合わせに分け、顧問先の情報を扱うかどうかと、使う環境を決める
  3. 回数が一番多い作業を1つだけ選び、8〜9割の自動化を目標に試作して、1か月使ってから広げる

最初の1つは、回数が多く、判断が少ない作業が向いています。多くの事務所では、①の回収・催促がこれに当たります。顧問先の数だけくり返していて、しかも中身は「まだ届いていません」という連絡なので、ワークフロー自動化で置き換えやすいからです。

📌業種が違っても進め方は同じです。業務の書き出し方は「製造業のAI活用事例|中小メーカーは見積・日報・図面探しから始める|業務の書き出し方と3つの解決策」でも詳しく説明しています。


よくある質問

顧問先の決算書や給与データをChatGPTに入れてもいいですか?

事務所の規程と、使っている環境の契約・設定によります。決まっていないうちは顧問先の情報は入れず、マニュアルや案内文など顧問先の情報を使わない作業から始めるのが安全です。顧問先の情報を扱いたい場合は、事務所の中だけで動くローカルLLMなど、データを外に出さない環境を検討してください。

会計ソフトや給与ソフトについているAI機能だけで十分ですか?

その機能で困りごとが解決するなら十分です。ただ、ソフトの機能は「そのソフトの中の作業」が中心なので、顧問先からの資料回収や、ソフトに取り込む前のデータの整形、ソフトをまたいだ照合のような、ソフトとソフトの間の作業は残りがちです。先に業務を書き出し、残った作業を3つの解決策で埋める順番がおすすめです。

所長と職員数名の小さな事務所でも取り組めますか?

取り組めます。むしろ人数が少ない事務所ほど、顧問先1社あたりの定型作業が1人に集中しているので、1つ自動化したときの効果が大きくなります。全部を一度に変えようとせず、回数の多い作業を1つ選んで試すところから始めてください。


まとめ

税理士事務所・社労士事務所のAI活用は、「守秘義務があるからAIは使えない」で止めるのではなく、顧問先1社ごとに毎月くり返している作業を四角と矢印で書き出し、回収・読み取りと入力・照合・問い合わせの4つに分けることから始まります。顧問先の情報をどの環境で扱うかを先に決め、作業ごとにワークフロー自動化・AIエージェント・コーディングエージェントのどれで解決するかを選び、8〜9割をAI、例外と最終確認を人という分担にする。この順番なら、顧問先の秘密を守りながら、繁忙期の手間を減らせます。

📌AI研修の選び方・進め方の全体像は「法人向けAI研修の完全ガイド|7つの順番で決める進め方と費用・形式・定着まで10記事で解説」へ

「顧問先が増えて職員が回らないが、何から自動化すればいいか分からない」「顧問先の情報を扱うので、どの環境でAIを使えばいいか決められない」という状況なら、ご相談ください。ホリエモンAI学校の法人プランでは、毎月の面談で事務所の困りごとリストを一緒に整理し、ローカルLLMを含めてどの方法で解決するかまで伴走します。税務・労務の専門知識は先生方の方が詳しいので、私たちは業務の分解と自動化の方法をお手伝いします。

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