【2026年最新】クリニックのAI活用|患者情報を守りながら問診・カルテ・事務の手間を減らす進め方と3つの解決策

この記事は、クリニックや医療法人の院長・事務長の、「患者さんの情報を扱う仕事だからAIは使えない」と考えて、問診票の転記やカルテ・書類づくりの手間をそのまま抱えているという困りごとを解決するために、私がこれまで400社・4,000人の研修で見てきたことをまとめたものです。

結論:クリニックのAI活用は、業務を「患者さんの情報を扱う作業」と「扱わない作業」に仕分けると進みます。扱わない作業(院内マニュアル、求人、シフト、案内文など)は普段使いのAIで今日から始められ、問診内容をカルテの下書きにするような患者情報を扱う作業は、院内のパソコンやサーバーだけで動かす「ローカルLLM」などの安全な環境で行います。どちらも、業務を四角と矢印で書き出し、「ワークフロー自動化」「AIエージェント」「コーディングエージェントで院内ツールを作る」の3つから解決策を選びます。

📌ほかの業種も含めた全体像は「業種別のAI活用事例ガイド|中小企業は「業種」より「業務」で探す」で、10業種の最初の1つを早見表にまとめています。

最初にお伝えしておくと、ホリエモンAI学校は医療に特化した会社ではありません。診療の中身は先生方の方がはるかに詳しいので、私たちがお手伝いするのは、どの業種でも同じ「困りごとを書き出して、業務を分解して、自動化する」部分です。この記事では、その進め方をクリニックの業務に当てはめて説明します。


クリニックのAI活用が止まりやすい理由

医療機関の方からいただく相談で一番多いのは、実は「どのAIが便利か」ではなく「患者さんの情報をAIに入れていいのか」というセキュリティの相談です。一般的なChatGPTやGemini、Claudeのようなクラウド上のAIに患者さんの情報を入れること自体が良くない、と考えている医療機関は多く、その結果「だから院内ではAIは使わない」で止まってしまうケースをよく見ます。

慎重になるのは当然です。病歴は個人情報保護法で「要配慮個人情報」と定められており(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第2条第3項)、医療機関の情報システムについては厚生労働省が「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を出しています(2026年6月に第7.0版を公表。出典:厚生労働省)。

ただ、ここで「全部やめる」にしてしまうのはもったいないと私は考えています。クリニックの仕事の中には、患者さんの情報をまったく扱わない事務作業もたくさんあるからです。

ホリエモンAI学校では、受講企業と「困りごとリスト」を共有し、社員の方に自分の業務で面倒なことを書いてもらっています。業種を問わず集まった1,705件の中には、「介護・医療・福祉など業界特有の記録・帳票づくりが大変」という困りごとが20件あり、具体的には次のような声が並んでいます。

  • 問診票を紙からオンライン化したい
  • 評価表・カルテの作成に手間がかかる
  • 病歴の時系列整理に手間がかかる

ほかにも、業種を問わず多い「データ集計・レポート化(46件)」「社内の資料・情報が探しにくい(44件)」「シフト・人員配置表の作成(20件)」は、クリニックの事務でもそのまま起きている困りごとです。


業務を「患者情報あり・なし」で仕分ける(初診の流れの例)

どのAIを使うかを考える前に、まず業務を四角と矢印で書き出します。たとえば初診の患者さんが来院してから会計までを書くと、次のようになります。

  1. 電話やWebで予約を受ける【患者情報あり】
  2. 来院した患者さんが紙の問診票を書く【患者情報あり】
  3. 受付スタッフが問診票の内容を電子カルテに打ち直す【患者情報あり】
  4. 医師が問診内容を見ながら診察し、カルテを書く【患者情報あり】
  5. 会計・次回予約・お薬の説明をする【患者情報あり】
  6. 翌日以降に紹介状や書類を作る【患者情報あり】

こうして見ると、診療の流れはほとんどが患者情報を扱う作業です。一方、診療の外側には次のような「患者情報なし」の作業もあります。

  • スタッフ向けの院内マニュアル・手順書の作成と更新
  • 求人原稿の作成、応募者への連絡
  • スタッフのシフト表づくり
  • ホームページやお知らせ、休診案内の文章づくり
  • 月次の患者数や売上の集計表づくり(個人が特定されない集計値の扱い)

「患者情報なし」の作業は、普段使いのAIで今日から始められます。「患者情報あり」の作業は、どこまでの情報をどの環境で扱うかを院内で決めてから取り組みます。仕分けるだけで、「全部だめ」から「ここは今すぐできる」に変わります。


患者情報を扱うときの3つの環境

患者情報を扱う作業について、私は受講企業にいつも「会社の環境次第です」とお伝えしています。安全性の高い順に、次の3つの選び方があります。

環境どういうものか向いているクリニック
1. ローカルLLM(院内だけで動くAI)院内のパソコンやサーバーの中でAIを動かし、データを外部に送らない患者情報を一切外に出したくない。問診やカルテの下書きにAIを使いたい
2. Microsoftなど1つの環境の中だけで使うすでに契約しているMicrosoft 365などの中のAIだけを使い、外部サービスとの連携は禁止する院内の事務がMicrosoft 365で回っている
3. 一般的なChatGPT・ClaudeなどふつうのクラウドAIを使う。患者情報は入れないルールにするまずは患者情報なしの事務作業から始めたい

実際、医療機関からは「ローカル環境で、問診の内容を自動でカルテに入れたい」という、ローカルLLMの相談がとても多くあります。ホリエモンAI学校はこのローカルLLMの構築も得意としています。なお、どの環境を選ぶ場合も、厚生労働省のガイドラインや電子カルテの提供会社の条件に合っているかは、院内の担当者や専門家と必ず確認してください。私は法律やガイドライン解釈の専門家ではないので、ここでは考え方の整理にとどめます。


3つの解決策の選び方(クリニックの例)

書き出した作業は、次の3つのどれかで解決します。選ぶ観点は3つで、頻度(毎日か、年に数回か)、判断の要否(毎回同じ手順なら、AIを使わない自動化で十分)、そして院内で使っているツールの「派閥」(Microsoft・Googleなど)です。

解決策向いている作業クリニックでの例
ワークフロー自動化毎回同じ手順で、判断が要らない作業Webフォームで受けた予約や問い合わせを院内の一覧表に登録してスタッフに通知する/休診日の前日に案内を自動で送る
AIエージェント文章を読む・まとめる・下書きする作業ローカルLLMで問診内容からカルテの下書きを作る/紹介状の経過を時系列に整理する/院内マニュアルを読んでスタッフの質問に答える
コーディングエージェントで院内ツール作成既存のツールでは院内のやり方に合わない作業紙の問診票を院内のタブレットで入力できる簡単なツールにする/院内だけで使う集計画面を作る

大事なのは、最初から100%の自動化を目指さないことです。たとえばカルテの下書きは、AIが8〜9割を作り、医師が確認して直したうえで確定する。この「下書きまでをAI、確定は人」という分担にするだけで、毎日の書く時間は確実に減ります。例外的なケースは人が対応すれば十分です。

📌患者さんからのよくある質問に自動で答える方法は「botpressでクリニック専用チャットボット|24時間自動応答事例」で紹介しています。問い合わせ対応の困りごとならこちらへ。


まず1つ選ぶなら「紙の問診票の転記」から

どこから手をつけるか迷ったら、困りごとリストにも出てくる「紙の問診票を電子カルテに打ち直す作業」を見てください。毎日、患者さんの数だけ発生し、手順はほぼ同じで、転記ミスも起きやすい作業です。

  1. 問診票の入口をタブレットやWebフォームに変える(ワークフロー自動化、または院内ツール作成)
  2. 入力された問診内容を、院内で動くAIが「主訴・経過・既往歴」などのカルテの書式に整える(ローカルLLMのAIエージェント)
  3. 医師が下書きを確認・修正して確定する(人)

四角と矢印で書くと、「受付スタッフが打ち直す」という四角そのものがなくなるのが分かります。私がいつも感じるのは、口では「そんなに時間はかかっていない」と言っていた作業ほど、文字で書き出すと実はめちゃくちゃ時間をかけていた、ということです。

📌条件を守った表をAIに作らせる例は「介護施設のシフト作成をAIで自動化する方法|Geminiで条件を守ったシフト案を作る3ステップ」へ。患者情報を使わないので、クリニックのスタッフのシフトづくりにもそのまま使える考え方です。

📌業種が違っても進め方は同じです。業務の書き出し方は「製造業のAI活用事例|中小メーカーは見積・日報・図面探しから始める」でも詳しく説明しています。


他の医療機関の公開事例:看護の申し送りと退院サマリー

病院での生成AIの活用は、すでに公開されている事例もあります(当社の受講企業ではなく、他の医療機関の公開事例です)。

  • 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院(公開事例):2024年11月から診療以外の業務に生成AIを使ってきた流れで、看護の申し送りに必要な要点整理に生成AIを使う計画を発表。退院サマリーの作成は外部のサービスで支援し(年間約1万6,000件)、日本マイクロソフトのプラットフォーム上で運用ルールを整えて進めると紹介されています。運用開始は2026年6月予定とされ、成果の数値は記載されていません。(出典:IT Leaders)

この例も、出発点は「申し送り」「退院サマリー」という具体的な書く作業で、しかも「どの環境の上で、どんなルールで使うか」を先に決めています。規模は違っても、クリニックで考える順番は同じです。

📌同じく顧客の情報を預かる税理士・社労士事務所の進め方は「税理士事務所・社労士事務所のAI活用|顧問先ごとに毎月くり返す回収・入力・照合・問い合わせを減らす進め方と3つの解決策」へ



よくある質問

患者さんの情報をChatGPTに入れてもいいですか?

院内のルールと、使っている環境の契約・設定によります。決まっていないうちは、患者さんの情報は入れず、院内マニュアルや求人、案内文など患者情報を扱わない作業から始めるのが安全です。患者情報を扱いたい場合は、院内だけで動くローカルLLMなど、データを外に出さない環境を検討してください。

小さなクリニックでもローカルLLMは使えますか?

使えます。院内のパソコンやサーバーでAIを動かす方法で、データを外部に送らないのが特長です。ただし、どのくらいの性能の機械が必要か、どの作業まで任せるかは、扱う作業によって変わります。まずは問診の転記など1つの作業に絞って試すのがおすすめです。

医療向けのAIツールを先に選んだ方がいいですか?

おすすめしません。ツールを先に選ぶと、ツールでできることに業務を合わせることになり、本当に痛い作業が残りがちです。困りごとを書き出し、患者情報あり・なしで仕分け、3つの解決策のどれが合うかを決めてから、必要ならツールを選ぶ順番が失敗しにくい進め方です。


まとめ

クリニックのAI活用は、「患者情報があるからAIは使えない」で止めるのではなく、業務を四角と矢印で書き出し、患者情報を扱う作業と扱わない作業に仕分けることから始まります。扱わない作業は普段使いのAIで今日から、扱う作業はローカルLLMなどの安全な環境で、下書きはAI・確定は人という分担にする。この順番なら、診療の質を守りながら、問診・カルテ・事務の手間を減らせます。

📌AI研修の選び方・進め方の全体像は「法人向けAI研修の完全ガイド|7つの順番で決める進め方と費用・形式・定着まで10記事で解説」へ

「問診やカルテの転記を減らしたいが、患者さんの情報をどう扱えばいいか分からない」「院内でAIを導入したいが、進められる人がいない」という状況なら、ご相談ください。ホリエモンAI学校の法人プランでは、毎月の面談で院内の困りごとリストを一緒に整理し、ローカルLLMを含めてどの方法で解決するかまで伴走します。診療の専門知識は先生方の方が詳しいので、私たちは業務の分解と自動化の方法をお手伝いします。

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