この記事は、支店・店舗・部署から届く数字や、いくつものシステムから出したデータを、月末や月初に担当者がExcelに集め直して実績表や会議資料を作るのに、毎月半日から数日かかっている中小企業の社長・管理部門の担当者の、「数字をまとめるだけで月初が終わり、肝心の打ち手を考える時間がない」という困りごとを解決するために、私がこれまで400社・4,000人の研修で見てきたことをまとめたものです。
結論:データ集計・実績表づくりの時間は、「集める→形をそろえる→計算する→表とグラフにする→コメントを書く→配る」の6つの作業に分け、決まった手順の部分はワークフロー自動化かプログラム(スクリプト)に、形のそろえ方やコメントの下書きのような判断が要る部分だけをAIに任せると減らせます。数字の計算そのものはAIに毎回やらせず、Excelやプログラムにやらせてください。また、集計が大変な会社の多くは、集計の前の「入力・転記」でつまずいています。表を作る作業より先に、数字が入ってくる入口をそろえることが近道です。
データ集計の悩みは、受講企業の困りごとで2番目に多い
ホリエモンAI学校では、受講企業の社員の方に「困りごとリスト」を書いてもらっています。集まった1,705件を似たもの同士でまとめると、「データ集計・実績表・レポート化に手間がかかる」は46件で、98種類の困りごとの中で議事録に次いで2番目に多いものでした。
46件を一つずつ読んで、私たちが内容で分けると次のようになります。
| 困りごとの中身 | 件数 | 実際に書かれていた声(例) |
|---|---|---|
| 集計して表・グラフにすること(実績表・予算対比・KPI・会議資料) | 22件 | 予算対比の実績表を自動で作りたい/KPIの集計・グラフ化を自動化したい/会議資料用のデータ集計に手間がかかる/月末集計を自動化したい |
| 集計の前の入力・転記・管理表の更新 | 20件 | 売上データの転記作業が手間/店舗の収支シート入力が手間/進捗表への転記漏れを防ぎたい/KPI集計の転記工数を減らしたい |
| 集めた数字の見える化・分析 | 4件 | Excel管理表をAIで可視化したい/売上データの管理・分析に手間がかかる |
出典:ホリエモンAI学校の受講企業が記入した困りごとリスト(1,705件を98種類にまとめた社内集計、2026年10月時点)。分け方は筆者によるものです。
ここで見てほしいのは、46件のうち20件が「表を作る」前の入力・転記の悩みだということです。「集計を自動化したい」という相談でも、実際に時間を食っているのは、各店舗から届いた数字を手で打ち込む、システムから出したデータを別の表に写す、といった入口の作業であることが少なくありません。
月次の実績表づくりを四角と矢印に分解する
ホリエモンAI学校では、困りごとをいきなりAIで解こうとせず、まず業務を四角と矢印の流れに書き出します。病院で「頭が痛い」と言うと、医者が原因を調べてから治療を決めるのと同じで、どこが痛いのかを先にはっきりさせるためです。複数の店舗や部署の数字をまとめて月次の実績表を作る場合、多くの会社でおおよそ次の流れになります。
| # | 作業 | よくある手作業 | 向いている解決策 |
|---|---|---|---|
| 1 | 数字を集める | 各店舗・部署にメールで催促し、届いたExcelを1つずつ開く。販売管理や会計のシステムからCSVを手で書き出す | ワークフロー自動化(決まったフォルダやメールに届いたら自動で取り込む、締め日に未提出の人へ自動で催促する) |
| 2 | 形をそろえる | 店舗ごとに違う列の並び・表記(「㈱」と「株式会社」、日付の書き方など)を手で直す | コーディングエージェントで変換のプログラムを作る。表記ゆれの判断が難しいものだけAIに任せる |
| 3 | 計算する | 合計・前月比・予算比・前年比を関数やコピーで出す | Excelの関数・ピボットテーブル、またはプログラム(AIに毎回計算させない) |
| 4 | 表とグラフにする | 毎月同じ形の表とグラフを作り直す | ひな形を1つ決め、プログラムかワークフロー自動化で毎月自動で作る |
| 5 | コメントを書く | 「なぜ下がったか」「どこが伸びたか」を数字を見比べて書く | AI(増減の大きい項目の抜き出しとコメントの下書き)+人が確認 |
| 6 | 配る・会議で使う | 会議資料に貼り、メールやチャットで配る | ワークフロー自動化(決まった宛先・チャンネルに自動で送る) |
書き出してみると、「実績表づくり」は1つの作業ではなく、6つほどの作業がつながったものだと分かります。そして、多くの会社で時間を取られているのは3の計算ではなく、1の「集める」と2の「形をそろえる」です。ここが手作業のままなら、計算や表づくりだけを自動にしても、担当者の月初はあまり楽になりません。
数字の計算はAIにやらせず、Excelかプログラムにやらせる
集計をAIで自動化しようとして一番多いつまずきが、ChatGPTなどのチャットにデータを貼り付けて「合計して」「前月比を出して」と毎回頼むやり方です。チャット型のAIは文章を作るのが得意な道具で、毎回同じ答えを出す計算機ではありません。行数が多いデータでは、読み落としや計算の間違いが起きることがあり、毎月人が検算するなら、手で集計するのと手間が変わりません。
役割は次のように分けてください。
- 計算:Excelの関数・ピボットテーブル、またはプログラム。何度実行しても同じ結果が出ます。
- AIの役目①:その計算をするExcelの数式やプログラムを作ってもらう(作るのは1回だけ)。
- AIの役目②:形のバラバラなデータをどうそろえるかの判断と、出来上がった表を読んだコメントの下書き。
つまり、AIは「毎月計算する人」ではなく、「計算の仕組みを一度作ってくれる人」と「表を読んで気づきを書く人」として使います。
3つの解決策のどれを使うかは「頻度・判断・派閥」で決める
業務を楽にする方法は、決まった流れを自動で回す「ワークフロー自動化」、判断を含む作業を任せる「AIエージェント」、自社専用の道具を作る「コーディングエージェント」の3つです。集計の仕事でどれを使うかは、次の3つで決めます。
- 頻度:月次・週次の実績表のようにくり返す集計は、ワークフロー自動化か、コーディングエージェントで作ったプログラムにします。「過去3年分の売上を一度だけまとめ直したい」といった一回きりの集計なら、AIエージェントに1回やってもらえば十分です。
- 判断の要否:「決まったフォルダから集めて、決まった表に足す」ような判断の要らない部分は、AIを使わずワークフロー自動化やプログラムで足ります。AIは「この店舗の『売上』列は税込か税抜か」「この会社名は同じ取引先か」のような、判断が要る部分にだけ使います。
- 派閥:数字がExcelとTeamsで回っているMicrosoft 365の会社ならPower Automate、Googleスプレッドシートが中心ならGoogleの仕組みやZapier・n8nなど、今使っているツールとつながるものを選びます。
たとえば上の6つの流れなら、1と6はワークフロー自動化、2〜4はコーディングエージェントで作ったプログラム、5はAI、という組み合わせになることが多いです。私自身、2026年5月からClaude Codeというコーディングエージェントを使って、広告の効果を一覧で見える化する仕組みや、メールアドレスをキーにして社内の30〜40のデータを突き合わせる仕組みを作りました。過去にセミナーに来てくれた方が今月受講した、ということも、データを統合したことで分かるようになりました。こうした「いくつものデータを集めて、そろえて、まとめる」作業は、プログラムを書けない人でもコーディングエージェントに頼んで仕組みにできます。
📌3つの手段の違いと、Microsoft 365だけでできることは「AIで事務作業を自動化する方法|自動化しやすい事務7つと「3つの手段」の選び方」へ
「田中さんしか分からない集計Excel」は、まずAIに説明させる
集計の自動化の相談でよく出てくるのが、代々引き継がれてきた職人技のExcelです。どのシートのどのマクロで何が計算されているのか誰も分からず、「転勤した田中さんを呼んでこい」となっている。こういうExcelがある会社は、いきなり作り直すのではなく、まずAIに中身を説明させてください。
今はExcelの横にMicrosoftのCopilotなどのAIを出して、「このシートは何を計算しているか」「このマクロは何をしているか」を聞けます。私はこれを翻訳のようなものだと考えています。ごちゃごちゃになったものを読む、書き直す、どこが壊れているかを調べる、はAIがとても得意な作業です。中身が分かれば、上の6つの流れのどこを自動化すればいいかも見えてきます。
📌Excelの横のAIに頼む具体的な場面は「ChatGPTの経理・総務での活用|チャットで済む4つの作業と「毎月くり返す作業」の仕組み化」へ
集計の自動化を止めないための4つの決めごと
- 入口の形を1つに決める:店舗や部署から届く数字の形がバラバラなら、提出用のひな形(Excel・スプレッドシート・入力フォーム)を1つに決めます。形がそろうだけで、2の「形をそろえる」作業の大半が消えます。どうしても形を変えられない相手の分だけ、プログラムやAIでそろえます。
- 数字の定義を書いておく:「売上」は税込か税抜か、返品を引くか、いつの日付で数えるか。定義が担当者の頭の中にしかないと、自動化した表と手で作っていた表の数字が合わず、誰も信用しなくなります。
- 最初の数か月は手作業の表と見比べる:自動で作った表を、これまでの手作業の表と2〜3か月並べて、数字が一致するか確かめてから切り替えます。
- 100%を目指さない:最初から全部の店舗・全部の数字を自動にしようとすると止まります。8〜9割が自動で集まれば十分効果があり、残りの例外は人が対応すればいい、というのが私の考えです。
公開事例:集計・まとめの作業時間を減らした自治体の例
集計の負担は自治体でも大きく、取り組みが公開されています。以下はいずれも他の組織の公開事例で、ホリエモンAI学校の受講企業の事例ではありません。
- 神奈川県小田原市(公開事例・ワークフロー自動化):81の課ごとの超過勤務時間と年休取得状況を月2回まとめ、課ごとにデータを抜き出してメールで送る作業をRPAで自動化。この業務の年間作業時間が486時間から24時間になり、「462時間(95.1%)削減」と公表されています(出典:総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」)。
- 大分県別府市(公開事例・AI+ワークフロー自動化):約2,600件の市民アンケートの自由記述を分類する作業に、生成AIとRPAを組み合わせて活用。「職員一人だと2週間程度かかる作業が生成AIとRPAの活用により2日間程度に短縮できたと実感している」と紹介されています(出典:総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック 別冊付録 先行団体における生成AI導入事例集」)。
2つの例は、使い分けがはっきりしています。小田原市のように決まった手順をくり返すだけの集計は、AIを使わずワークフロー自動化で大きく減らせます。別府市のように、自由記述を「どの分類に入るか」判断する必要がある集計では、判断の部分を生成AIに任せ、データの受け渡しをRPAが担っています。上で書いた「判断が要る部分にだけAIを使う」考え方と同じです。
データ集計の自動化についてよくある質問
ChatGPTにExcelを渡せば、毎月の集計を任せられますか?
一度きりの集計や、表の傾向を読む用途なら役に立ちますが、毎月の集計をチャットに任せるのはおすすめしません。チャット型のAIは毎回同じ計算をする道具ではないため、計算はExcelの関数やプログラムに任せ、AIにはその数式やプログラムを一度作ってもらう使い方にしてください。
プログラミングができなくても、集計を自動化できますか?
できます。決まった場所からデータを集めて送るだけなら、Power AutomateやZapierなどのワークフロー自動化ツールを画面の操作で設定できます。形をそろえて表を作るプログラムも、Claude Codeなどのコーディングエージェントに「今の作業手順」を日本語で伝えれば作ってもらえます。大事なのは、プログラミングの知識より、今の作業を順番に書き出せることです。
集計の自動化は、まず何から始めればいいですか?
毎月必ず作っている実績表を1つ選び、数字がどこから届き、誰がどう直し、どこに貼って配っているかを四角と矢印で書き出してください。そのうえで、一番時間がかかっている作業が「集める」「そろえる」なら入口の形を決めることから、「計算・表づくり」ならプログラム化から始めると、効果が早く出ます。
まとめ:集計は「表を作る」より先に「入口」をそろえる
データ集計・実績表づくりの時間を減らすには、作業を「集める・そろえる・計算する・表にする・コメントを書く・配る」の6つに分け、頻度・判断の要否・派閥で3つの解決策を選ぶことが近道です。計算はAIに毎回やらせずExcelやプログラムに任せ、AIには仕組みづくりとコメントの下書きを頼んでください。そして、受講企業の悩みの半分近くが入力・転記だったように、表を作るより先に、数字が入ってくる入口の形をそろえることが大切です。
同じ「〇〇に時間がかかる」という困りごとを業務の流れに分けて解決する考え方は、「議事録作成をAIで自動化する方法」でも書いています。集計した表や資料を後から探せなくなる問題は「社内の資料が探しにくい問題をAIで解決する方法」で解説しています。
「月初の数日が集計で終わってしまう」「社員にAIツールを渡したが、毎月の集計作業はまったく変わっていない」という状況なら、今の集計の流れを一緒に書き出し、どこから自動化するかを決めるところから進められます。Excelの関数やひな形の見直しだけで解決できる場合は、その旨を正直にお伝えします。
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