この記事は、会議のたびに誰かが議事録係になり、録音を聞き直して清書し、決まったことを関係者に配るまでに何時間も取られている中小企業の社長・総務担当者の、「議事録づくりで本来の仕事が止まる」という困りごとを解決するために、私がこれまで400社・4,000人の研修で見てきたことをまとめたものです。
結論:議事録づくりの時間は、「録音・文字起こし・要約」を今使っている会議ツール(Teams・Zoom・Google Meetなど)に付いている機能に任せ、そのあとの「清書・決定事項とToDoの抜き出し・共有・社内システムへの転記」を四角と矢印の流れに分解して自動化すると減らせます。新しい議事録ツールを買う前に、自社の会議ツールで何が使えるかを確かめ、議事録を作った「後」の作業を書き出すことから始めてください。文字起こしだけを自動にしても、清書と共有が手作業のままなら、議事録係の負担はあまり減りません。
議事録づくりは、受講企業の困りごとで一番多い悩みです
ホリエモンAI学校では、受講企業の社員の方に「困りごとリスト」を書いてもらっています。集まった1,705件を似たもの同士でまとめると、「議事録づくりに時間がかかる」は51件で、98種類の困りごとの中で最も多いものでした。
ただ、51件を一つずつ読むと、「議事録を作るのが大変」という声ばかりではありません。私たちが内容で分けると、次のようになります。
| 困りごとの中身 | 件数 | 実際に書かれていた声(例) |
|---|---|---|
| 記録を作ること自体(文字起こし・作成) | 32件 | 議事録作成に時間がかかる/議事録を手入力で起こしている/会議議事録の作成が記憶頼り |
| 作った後の作業(転記・ToDo化・日程化・配信・整理) | 10件 | 議事録を社内システムへ転記している/議事録のToDoを自動でリスト化したい/打合せの決定事項が残らず振り返れない |
| 書き方・品質(書式のばらつき・分かりやすさ・個人情報・多言語) | 4件 | 会議録の書き方がバラバラ/個人情報を含まない議事録を作りたい |
| 会議の進め方そのもの(議事録係・準備・朝礼・面談記録など) | 5件 | 議事録係だけの参加者がいる/会議の準備不足で時間が無駄になる/朝礼内容の文書化に手間がかかる |
出典:ホリエモンAI学校の受講企業が記入した困りごとリスト(1,705件を98種類にまとめた社内集計、2026年10月時点)。分け方は筆者によるものです。
つまり、3件に1件は「作った後」や「書き方」「会議の進め方」の悩みです。文字起こしツールを入れるだけでは、この3割は解決しません。
まず、自社の会議ツールに付いている機能を確かめる
少し前までは、議事録専用の有料ツールにお金を払うのが流行っていました。今は、Microsoftの会社ならMicrosoftの、ZoomならZoomの、GoogleならGoogle Meetの、すでに使っている会議ツールに付いている文字起こし・要約の機能で済ませる会社が多くなっています。
ここで大事なのは、どのツールが一番賢いかではなく、会社がどの「派閥」の道具を使っているかです。私はいつも、会社が使っているツールをGoogle・Microsoft・ChatGPT(OpenAI)・Claudeの4つの派閥で考えます。普段のメール・ファイル・会議がMicrosoft 365で回っている会社が、議事録だけ別の会社のツールを入れると、録音データや議事録の置き場所が分かれ、あとで探せなくなります。
- 社内の会議で一番使っている会議ツールを1つ決める(Teams・Zoom・Google Meetなど)
- そのツールの、自社の契約プランで文字起こし・要約が使えるかを、管理者の画面か公式ページで確かめる(使える条件はプランによって違います)
- 使えるなら、まず週1回の定例会議1つで試す。使えない場合だけ、別のツールやプランの追加を検討する
📌会社の軸にするAIツールの決め方は「ChatGPT・Copilot・Geminiを法人で比較|機能表より「今使っている道具」で決める3つの質問」へ
議事録づくりを四角と矢印に分解する(社内の定例会議の例)
ホリエモンAI学校では、困りごとをいきなりAIで解こうとせず、まず業務を四角と矢印の流れに書き出します。病院で「頭が痛い」と言うと、医者が原因を調べてから治療を決めるのと同じで、どこが痛いのかを先にはっきりさせるためです。社内の定例会議の議事録なら、多くの会社でおおよそ次の流れになります。
| # | 作業 | よくある手作業 | 向いている解決策 |
|---|---|---|---|
| 1 | 会議の予約・録音の開始 | 議事録係が毎回レコーダーやメモを準備 | ワークフロー自動化(予定に会議URLが入ったら録音・記録を自動で開始する設定) |
| 2 | 文字起こし | 録音を聞き直して打ち込む | 会議ツールの付属機能 |
| 3 | 清書・要約 | 話し言葉を整え、社内の書式に合わせる | AI(社内の書式を指示として渡して下書きを作らせる) |
| 4 | 決定事項・ToDo・期限の抜き出し | 誰が何をいつまでに、を読み返して拾う | AI(判断が要るため) |
| 5 | 共有・回覧 | 関係者を選んでメールやチャットで送る | ワークフロー自動化(決まった宛先・チャンネルに自動で送る) |
| 6 | 社内システム・タスク管理への転記 | 顧客管理やタスク表に手で写す | ワークフロー自動化、システムが特殊ならコーディングエージェントで連携ツールを作る |
| 7 | 次回会議での確認 | 前回の議事録を探して読み返す | ワークフロー自動化(次回の予定にToDoの進み具合を自動で添える) |
書き出してみると、「議事録づくり」は1つの作業ではなく、7つほどの作業がつながったものだと分かります。そして、本当に時間を取られているのが2の文字起こしではなく、3〜6の清書・抜き出し・共有・転記だという会社も少なくありません。
3つの解決策のどれを使うかは「頻度・判断・派閥」で決める
業務を楽にする方法は、決まった流れを自動で回す「ワークフロー自動化」、判断を含む作業を任せる「AIエージェント」、自社専用の道具を作る「コーディングエージェント」の3つです。どれを使うかは、次の3つで決めます。
- 頻度:毎週の定例会議のように何度もくり返すなら、ワークフロー自動化か自社ツールにします。過去1年分の議事録を一度だけ整理し直す、といった一回きりの作業なら、AIエージェントに1回やってもらえば十分です。
- 判断の要否:「決まった宛先に送る」「決まった表に写す」のように判断が要らない部分は、AIを使わずワークフロー自動化だけで足ります。AIは「どれが決定事項か」「誰の宿題か」を読み取るような、判断が要る部分にだけ使います。
- 派閥:Microsoft 365の会社ならPower Automate、それ以外ならZapierやn8nなど、今使っているツールとつながるものを選びます。
たとえば上の流れなら、2はツールの付属機能、3と4はAI、1・5・7はワークフロー自動化、という組み合わせになります。社内の書式が独特だったり、海外拠点向けに多言語の議事録が必要だったり、個人情報を消してから共有したかったりする場合は、コーディングエージェントで自社専用の仕組みを作る方が早いこともあります。
📌3つの手段の違いと、Microsoft 365だけでできることは「AIで事務作業を自動化する方法|自動化しやすい事務7つと「3つの手段」の選び方」へ
議事録は「取って終わり」ではない
私が議事録の相談を受けて一番伝えたいのは、議事録は取って終わりではない、ということです。営業の打ち合わせなら、議事録をもとに要点を1枚の図にまとめたり、お客様にお礼のメールを送ったりします。社内の会議なら、ToDoを担当者に渡し、次の会議で進み具合を確かめます。
この「その後」の作業こそ、業務の流れに分解して、AIやワークフロー自動化ツールで自動化していく価値があります。会議が終わったら、議事録・要約・ToDoの一覧・関係者への共有までが自動で用意され、人は中身を確認して送るだけ、という状態が目標です。
📌商談の後のお礼メールや資料送付まで減らす方法は「ChatGPTの営業での活用|商談前後の作業の減らし方と「チャットでは足りない」3つの業務」へ
自動化した議事録で失敗しないための4つの決めごと
- 書式を1つに決める:「会議名・日時・参加者・決定事項・ToDo(担当・期限)・次回までの宿題」のように、会社で1つの型を決め、それをAIへの指示にします。困りごとリストにも「会議録の書き方がバラバラ」という声がありました。型が決まっていないと、AIに任せても人によって出来上がりが変わります。
- 人が最後に確認する:固有名詞や数字は聞き間違えることがあります。AIの出力は下書きと考え、決定事項と数字だけは会議の参加者が確認してから共有します。
- 社内の言葉を覚えさせる:社名・商品名・地名などの誤変換は、過去の議事録や用語の一覧をAIに渡すと減らせます(下の浜田市議会事務局の公開事例でも、過去の会議録をAIに読ませて誤認識を減らしています)。
- 録音と情報の扱いを決める:録音することを参加者に伝える、お客様の個人情報や社外秘をどこまで入力してよいかを決める、議事録の置き場所を1か所にする。この3つを社内ルールに書いてから始めます。
📌入れてよい情報の決め方は「生成AIの社内ルール(ガイドライン)の作り方|中小企業はA4用紙1枚・7項目から」へ
公開事例:議事録づくりの時間を減らした自治体の例
議事録の負担は会社だけでなく自治体でも大きく、取り組みが公開されています。以下はいずれも他の組織の公開事例で、ホリエモンAI学校の受講企業の事例ではありません。
- 東京都町田市(公開事例):職員が音声を聞いて手で文字起こししていた議事録づくりに、2024年11月から「議事録サポートAI」を導入。音声を文字にし、生成AIで議事要旨まで作れるようにしたところ、試験導入した会議の議事録作成で「作業時間を約96%削減できました」と公表しています(出典:町田市プレスリリース 2024年12月23日)。
- 島根県浜田市議会事務局(公開事例):録音を聞きながらの手作業で丸2〜3日かかっていた委員会の会議録を、文字起こし→11のルールによる整形→文体と表記の調整→職員による最終確認、の4段階に分けて生成AIで作るようにし、半日程度(約4分の1)に短縮したと紹介されています(出典:マニフェスト研究所ブログ 2025年8月25日)。
浜田市議会事務局の例は、議事録づくりを段階に分け、人が最後に確認する形にしている点で、上で書いた「分解してから任せる」考え方とよく似ています。いきなり全部をAIに任せるのではなく、作業を分けてAIに向く部分だけを任せていることが、実務で使える形になったポイントだと私は見ています。
困っていない会議の議事録は、自動化しなくていい
最後に、やらない方がいいことも書いておきます。私は、本人が困っていない業務にAIを入れることはおすすめしません。「AIで議事録を取れるらしいから、全部の会議で取ろう」と始めると、誰も読まない議事録が増えるだけで、課題の解決ではなく道具ありきになってしまいます。
自動化するのは、議事録係が清書に追われている会議、決まったことが伝わらず同じ話をくり返している会議など、実際に誰かが困っている会議からにしてください。困りごとリストには「議事録係だけの参加者がいる」という声もありました。記録が自動で残るなら、記録のためだけに出席している人は、会議に出なくてよくなるかもしれません。会議の出席者を見直すことも、議事録づくりの時間を減らす方法の一つです。
議事録の自動化についてよくある質問
議事録の自動作成には、専用の有料ツールが必要ですか?
多くの場合、最初は必要ありません。Teams・Zoom・Google Meetなど、すでに使っている会議ツールに文字起こしや要約の機能が付いていることがあるので、まず自社の契約プランで使えるかを確かめてください。付属の機能で足りないことがはっきりしてから、専用ツールを検討すれば無駄がありません。
AIが作った議事録は、そのまま共有してもいいですか?
そのまま共有するのはおすすめしません。固有名詞や数字の聞き間違い、決定事項の取り違えが起きることがあるので、決定事項・数字・担当と期限だけは、会議の参加者が確認してから共有してください。確認を前提にしても、清書を一から作るより時間は大きく減ります。
議事録の自動化は、まず何から始めればいいですか?
週1回の定例会議を1つ選び、議事録を作ってから共有・転記するまでの作業を四角と矢印で書き出すことから始めてください。そのうえで、文字起こしは会議ツールの機能、清書とToDoの抜き出しはAI、共有と転記はワークフロー自動化、と分けて1つずつ置き換えていくと、途中で止まりにくくなります。
まとめ:議事録は「作る」より「作った後」を減らす
議事録づくりの時間を減らすには、文字起こしは今使っている会議ツールの機能に任せ、清書・決定事項とToDoの抜き出し・共有・転記までを四角と矢印の流れに分解して、頻度・判断の要否・派閥で3つの解決策を選ぶことが近道です。書式を1つに決め、人が最後に確認し、録音と情報の扱いをルールにしてから始めてください。そして、困っていない会議まで自動化する必要はありません。
同じ考え方で、毎月の実績表づくりを6つの作業に分けて自動化する方法は「データ集計・実績表づくりをAIで自動化する方法」で書いています。
「議事録の文字起こしは自動になったのに、清書と共有に結局時間がかかっている」「社員にAIツールを渡したが、議事録以外の業務にどう広げればいいか分からない」という状況なら、議事録を作った後の流れを一緒に書き出し、どこから自動化するかを決めるところから進められます。自社の会議ツールの機能だけで解決できる場合は、その旨を正直にお伝えします。
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