この記事は、社内の連絡や申し送りをLINEやチャットで回している中小企業の社長・管理職の、「大事な連絡がほかの投稿に流れて埋もれ、あとから『聞いてない』『見ていない』と言われる」という困りごとを解決するために、私がこれまで400社・4,000人の研修で見てきたことをまとめたものです。
結論:社内の連絡が伝わらない原因は「流れる(ほかの投稿に埋もれる)」「読まれない(読んだか分からない)」「残らない(あとから見返せない)」の3つに分けられます。流れる問題は大事な連絡の出し先を雑談と分け、読まれない問題は確認の返事を取って未確認の人にだけ自動でリマインドし、残らない問題はチャットで決まったことをAIに拾わせて一覧に残すことで解決します。連絡ツールを新しく入れ替えるのは、この3つを分けてからで十分です。
「周知・連絡・申し送りが伝わらない」は受講企業の困りごとで8番目に多い
ホリエモンAI学校では、受講企業の社員の方に「困りごとリスト」を書いてもらっています。集まった1,705件を似たもの同士でまとめると、「社内の周知・連絡・申し送りが伝わらない/埋もれる」は31件で、98種類の困りごとの中で8番目に多いものでした。
31件を一つずつ読んで、私たちが中身で分けると次のようになります。
| 困りごとの中身 | 件数 | 実際に書かれていた声(例) |
|---|---|---|
| ノウハウ・過去の経験を共有したい | 7件 | 知識共有の体制づくりが難しい/仕事で培った知識や経験を共有しにくい/過去事故の情報が共有されていない/学んだ内容をスタッフに共有したい |
| 全員への周知・回覧が埋もれる、読んだか分からない | 6件 | 回覧物がたまる/回覧物の滞留に気づかない/社内回覧が埋もれて確認に手間がかかる/連絡が埋もれて誰が見たか分からない/社内周知が紙でアナログ |
| 申し送り・現場への伝達が伝わらない | 6件 | 申し送りが伝わりづらい/申し送りの共有を自動化したい/現場への作業内容の共有が大変/ホワイトボードの情報を共有したい/拠点間の情報共有を効率化したい |
| 案件・顧客・在庫の状況が共有されていない | 6件 | 案件の進捗が社内で共有できていない/受注から納期までを社内共有したい/顧客情報の共有を自動化したい/在庫・納期を外出先から確認したい |
| 周知文づくり・連絡手段を整えたい | 4件 | 社内周知文をAIで考えたい/情報配信をしやすくしたい/社内チャットを作りたい/チーム共有アプリを作りたい |
| 報告のやり取りそのものが負担 | 2件 | 都度の報告対応に時間を取られる/細かい報告要求が負担になっている |
出典:ホリエモンAI学校の受講企業が記入した困りごとリスト(1,705件を98種類にまとめた社内集計、2026年10月時点)。分け方は筆者によるものです。
ひとくちに「連絡が伝わらない」と言っても、全員に一度読んでほしい周知、次の人に確実に引き継ぐ申し送り、いつでも見られるようにしておきたい状況や知識では、必要な仕組みがまったく違います。これを一つのチャットで全部やろうとしていることが、埋もれる一番の原因です。
このうち、過去の資料やノウハウを「探す」側の問題は「社内の資料が探しにくい問題をAIで解決する方法」で書いています。この記事では、連絡を「届ける」側の問題を扱います。
連絡を四角と矢印に分解すると、「送った」と「伝わった」の間に4つの段階がある
私たちは、困りごとをいきなりAIで解こうとせず、まず業務を四角と矢印の流れに書き出してもらいます。工務店で見積もりとデザイナーとのやり取りに困っているなら、その連絡のやり方を自動化します。業種は関係なく、困っている業務の流れを書き出して、そこを自動化するのが私たちのやり方です。社内の連絡なら、おおよそ次の流れになります。
| # | 段階 | よくある状態 | 向いている解決策 |
|---|---|---|---|
| 1 | 書く | 長い文章を一から書く。大事な点(誰が・いつまでに・何を)が文章の途中に埋もれる | AI(要点と「誰が・いつまでに・何を」を先頭にまとめる) |
| 2 | 出す | 雑談や業務のやり取りと同じグループに投稿する。紙の回覧や口頭も混ざる | 運用の決めごと(大事な連絡の出し先を1か所に分ける) |
| 3 | 届く | 通知が多すぎて見落とす。休みの人やシフト外の人には届かない | ワークフロー自動化(対象者を決めて個別にも届ける) |
| 4 | 読んだか確かめる | 誰が見たか分からないので、出した側が一人ずつ聞いて回る | ワークフロー自動化(確認の返事を取り、未確認の人にだけ自動でリマインド) |
| 5 | 動く | 読んでも自分が何をすればいいか分からず、結局動かない | AI(担当者と期限を抜き出してタスクにする) |
| 6 | 残す | あとから「あの連絡どこ?」となり、同じ質問が何度も来る | AI+ワークフロー自動化(決まったことを一覧や台帳に自動で残す) |
書き出すと、多くの会社は1と2しかやっていないことが分かります。「送った」の時点で仕事が終わったことになっていて、3〜6は受け取る側の注意力まかせです。「聞いてない」が起きるのは、受け取った人がだらしないからではなく、届いたか・読んだか・動いたかを確かめる仕組みがないからです。
「流れる」を防ぐ:大事な連絡の出し先を、雑談と分ける
最初にやるのはAIではなく、連絡の出し先の整理です。全社への周知、部署内の業務連絡、雑談が同じLINEグループやチャットに流れていると、大事な連絡は1日で画面の外に押し出されます。
- 全員が必ず読む連絡(ルール変更、休業日、安全に関わること)は、それ専用のチャンネルやグループに出し、そこでは雑談や返信のやり取りをしない。
- 申し送りは、チャットに流すのではなく、決まった項目を持つ記録(フォーム、スプレッドシート、業務システムの申し送り欄など)に残し、チャットには「新しい申し送りがあります」という知らせだけを出す。
- 案件・在庫・納期などの状況は、毎回チャットで聞くのをやめ、元になっている台帳やシステムを見ればいい状態にする。
ここで、長い周知文を書くのが負担なら、AIを使います。伝えたい内容を箇条書きで貼り付け、「冒頭に、誰が・いつまでに・何をするかを3行でまとめ、そのあとに理由を短く書いて」と頼めば、読む側が一目で分かる周知文になります。困りごとリストにあった「社内周知文をAIで考えたい」は、ここで解決できます。
📌詳しくは「AIへの指示の出し方が分からない社員をなくす方法」へ
「読まれない」を防ぐ:確認の返事を取り、未確認の人にだけ自動でリマインドする
忙しい人は、届いた連絡を全部は読みません。上司が部下の日報を読み切れないのと同じで、社員も全社の連絡を全部は読めません。「ちゃんと読んで」と呼びかけるより、読んでもらえる前提を捨て、読んだかどうかを仕組みで確かめるのが近道です。
具体的には、次の流れをワークフロー自動化ツールで作ります。
- 大事な連絡を出すときは、対象者と確認の期限を決め、「確認しました」のボタンかリアクションを付けて投稿する。
- 確認した人を自動で一覧(スプレッドシートなど)に記録する。
- 期限の翌朝、まだ確認していない人にだけ、個別のメッセージで自動的にリマインドする。
- 出した人には「何人中何人が確認済み、未確認はこの人」という一覧だけを届ける。
こうすると、出した側が一人ずつ「見ましたか」と聞いて回る手間がなくなり、「聞いてない」と言われたときも、いつ届いて確認されたかが記録に残ります。困りごとリストにあった「連絡が埋もれて誰が見たか分からない」「回覧物の滞留に気づかない」は、この形で解決できます。紙の回覧をやめたい会社も、回覧の代わりにこの流れを使えば、誰で止まっているかが分かるようになります。
この部分は判断の要らない決まった作業なので、AIは使わなくても作れます。AIを使うのは、次の「残らない」の部分です。
「残らない」を防ぐ:チャットで決まったことをAIに拾わせ、一覧に残す
チャットの困るところは、決まったことや頼まれたことが、会話の流れの中に散らばってしまうことです。「さっきの件、来週の火曜でお願いします」「了解です」というやり取りは、その場では伝わっていても、3日後には誰も見つけられません。
そこで、業務用のチャンネルのやり取りを1日の終わりにAIに読ませ、次の3つだけを抜き出して一覧や台帳に残します。
- 決まったこと:日程、価格、やり方の変更など
- 頼まれたこと:誰が、何を、いつまでにやるか
- まだ答えが出ていないこと:質問されたまま返事がないもの
翌朝、この一覧を担当者ごとに届ければ、チャットを全部さかのぼらなくても、自分がやるべきことだけが分かります。申し送りも同じ考え方で、引き継ぐ人が音声やメモで話した内容を、AIが「対象(お客様・利用者・現場)」「変化があったこと」「次の人がやること」の決まった項目に整えて記録に残します。話すだけで記録になる方法は「日報・作業記録の入力をAIで減らす方法」で詳しく書いています。
なお、チャットのやり取りをAIに読ませるときは、どのチャンネルを、何のために読ませるのかを社員に先に伝えてください。黙って読ませると、社員は大事なことをチャットに書かなくなり、かえって連絡が見えなくなります。会社として契約したAIを使い、個人のアカウントに社内のやり取りを貼らないことも決めておきます。
📌詳しくは「議事録作成をAIで自動化する方法」へ
3つの解決策のどれを使うかは「頻度・判断・派閥」で決める
業務を楽にする方法は、決まった流れを自動で回す「ワークフロー自動化」、判断を含む作業を任せる「AIエージェント」、自社専用の道具を作る「コーディングエージェント」の3つです。社内の連絡でどれを使うかは、次の3つで決めます。
- 頻度:周知や申し送りは毎日のことなので、基本はワークフロー自動化か、コーディングエージェントで作った自社専用の仕組みにします。「過去半年分のチャットを読み返して、決まったルールを一覧にしたい」といった一回きりの作業なら、AIエージェントにまとめて読ませれば十分です。
- 判断の要否:「対象者に届ける」「未確認の人にリマインドする」「確認した人を記録する」は判断の要らない作業なので、ワークフロー自動化で足ります。AIは「長い連絡の要点をまとめる」「チャットから決まったことと頼まれたことを見分ける」のように、文章を読んで判断する部分にだけ使います。
- 派閥:Microsoft 365の会社ならTeamsとPower Automate、Google Workspaceの会社ならGoogle ChatやGmailとスプレッドシート、SlackやChatworkを使っている会社ならZapierやn8nでつなぐ、というように、今使っているツールとつながるものを選びます。現場の人がパソコンを使わず、ホワイトボードや紙で申し送りをしている場合は、Claude Codeなどのコーディングエージェントで、スマホで話すか写真を撮るだけの自社専用の申し送り画面を作る方法もあります。
どの方法でも、「連絡ツールを新しいものに入れ替えれば解決する」とは考えないでください。出し先が分かれておらず、確認の仕組みもないままツールだけを替えても、同じことが新しいツールの中で起きます。
連絡・申し送りにAIを使っている公開事例
以下は、各社が自社のサイトや報道で公開している事例です。ホリエモンAI学校の受講企業の事例ではありません。
- 株式会社グラファー(公開事例・自社専用ツールの開発):社内の決まりや申請についての問い合わせが多く、社内の情報共有サービスに答えがあっても見つけるのに時間がかかるという課題に対し、Slackで質問すると関連する社内記事を探して答えるAIアシスタントを自社で開発しています(出典:グラファー「“探せない”を解決する社内AIアシスタント」、2026年1月更新)。周知した内容が「残っていても届かない」問題を、聞かれたときに答える形で補っている例です。
- 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院(公開事例・生成AIによる要点整理):診療以外の業務に生成AIを広げる取り組みの一つとして、看護の申し送りに必要な要点の整理に生成AIを使う計画を公表しています(出典:IT Leaders(2026年2月19日))。記事の時点では計画段階で、成果は公表されていません。
どちらも、チャットや会話をそのまま流すのではなく、AIで要点をまとめたり、必要なときに引き出せる形にしたりしています。「流すだけの連絡を、届く形・残る形に変える」という、この記事で書いた進め方と同じ方向です。
社内の連絡・申し送りについてよくある質問
LINEグループで社内連絡をしていますが、やめるべきですか?
すぐにやめる必要はありません。先に、大事な連絡と雑談を同じグループに流さないこと、申し送りを決まった記録に残すことを決めてください。そのうえで、確認の記録や自動のリマインドを付けたい、退職した人の端末に業務の連絡を残したくないといった理由が出てきたら、会社で管理できる業務用のチャットへ移すことを考えます。
「読んだら返事をする」ルールにすれば解決しませんか?
ルールだけでは、忙しい時期に必ず守られなくなります。また、出した側が「誰が返事をしていないか」を数える手間が残ります。返事を自動で記録し、返事のない人にだけ自動でリマインドする仕組みにすると、ルールを守ってもらう手間も、確かめる手間も減ります。
社内の連絡をAIに読ませても、情報漏えいは大丈夫ですか?
会社として契約し、入力した内容が学習に使われない設定にしたAIを使い、どのチャンネルを読ませるかを決めて社員に伝えてください。個人のアカウントに社内のやり取りを貼り付けるのはやめます。詳しくは「ChatGPTの情報漏えい対策」で書いています。
まとめ:「送った」で終わらせず、届いた・読んだ・残ったまでを仕組みにする
社内の連絡が伝わらない問題は、「流れる」「読まれない」「残らない」の3つに分けて解決します。流れる問題は、大事な連絡と申し送りの出し先を雑談と分けます。読まれない問題は、確認の返事を取り、未確認の人にだけ自動でリマインドします。残らない問題は、チャットで決まったこと・頼まれたことをAIに拾わせ、一覧に残します。こうすると、「聞いてない」は、受け取る側の注意力の問題ではなくなります。
同じ「〇〇が大変」という困りごとを業務の流れに分けて解決する考え方は、「社内の資料が探しにくい問題をAIで解決する方法」や「日報・作業記録の入力をAIで減らす方法」でも書いています。
「大事な連絡がLINEやチャットで流れてしまう」「申し送りが伝わらず、同じ確認が何度も起きている」という状況なら、今の連絡の流れを一緒に書き出し、どこを出し先の決めごとで直し、どこを自動にし、何をAIに読ませるかを決めるところから進められます。出し先を分けるだけで解決できる場合は、その旨を正直にお伝えします。
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