この記事は、取引先からメール・Webサイト・郵送でばらばらに届く請求書を、経理や総務の担当者が毎月ダウンロードし、名前を付けてフォルダに保存し、「今月分がそろったか」を目で確かめている中小企業の社長・管理部門の担当者の、「請求書を集めて整理するだけで月初の何日かがつぶれる」という困りごとを解決するために、私がこれまで400社・4,000人の研修で見てきたことをまとめたものです。
結論:受け取った請求書の手間は、「取りに行く→保存して名前を付ける→今月分がそろったか確かめる」の3つの作業に分けて減らします。メールで届く請求書の保存と名前付けはワークフロー自動化で、取引先ごとに形がばらばらなPDFから日付・取引先・金額を読む部分だけAIに任せ、「そろったか」は毎月届くはずの取引先の一覧と照らして、足りない分だけを担当者に知らせます。最初にやることは、請求書の受け取り口を請求書専用のメールアドレス1つに寄せることです。保存先のフォルダを整えるより、入口をそろえる方が、手間は大きく減ります。
📌ほかの困りごとも含めた全体像は「AIで業務の困りごとを解決する方法|受講企業に多い10の困りごと別ガイド」で、困りごとに共通する5つのルールと早見表をまとめています。
「受け取った請求書の取得・保存・管理」は受講企業の困りごとで11番目に多い
ホリエモンAI学校では、受講企業の社員の方に「困りごとリスト」を書いてもらっています。集まった1,705件を似たもの同士でまとめると、「受け取った請求書・証憑の取得・保存・管理が手間」は27件で、98種類の困りごとの中で11番目に多いものでした。
27件を一つずつ読み、私たちが中身で分けると次のようになります。
| 困りごとの中身 | 件数 | 実際に書かれていた声(例) |
|---|---|---|
| メールで届いた請求書の保存・振り分け・名前付けが手間 | 9件 | メールの請求書を自動保存したい/請求書メールの振り分け保存が煩雑/請求書のファイル名変更を自動化したい/請求書を社内ルールで自動保存したい/複数の請求書を一つにまとめたい |
| 取引先のサイトや明細を毎月取りに行くのが手間 | 6件 | 請求書を定期的にダウンロードしている/取引明細のダウンロードが手間/届く請求書を自動で取得・保管したい/カード明細の管理が大変 |
| どこに何があるか分からない・履歴が追えない | 5件 | 受け取った請求書を一元管理したい/証憑の事業所が分からない/請求書の保存・履歴管理ができていない/請求書の管理に良い方法を知りたい |
| 保存した後の、お金の管理につながる作業が手間 | 7件 | 入金管理の漏れを防ぎたい/買掛金の送金管理が手間/振込の振り分けが手作業/領収書の転記と精算管理を自動化したい |
出典:ホリエモンAI学校の受講企業が記入した困りごとリスト(1,705件を98種類にまとめた社内集計、2026年10月時点)。分け方は筆者によるものです。
27件のうち20件は、請求書の中身を読む・入力する話ではなく、取りに行く、保存する、どこにあるか分かるようにするという「集めて置く」作業の悩みでした。請求書の手間というと、AIで読み取って会計ソフトに入力する話が注目されがちですが、その手前で毎月時間を取られている会社が多いということです。
なお、紙の請求書を読み取って入力する作業は「手書き・紙の書類のデータ入力をAIで減らす方法」で詳しく書いています。この記事は、その手前の「集める・置く・そろえる」に絞ります。
請求書の受け取りを四角と矢印に分解すると、手間は「入口の多さ」から生まれている
私は、業務をワークフロー(四角と矢印の流れ)に分解してしまえば、自動化できない業務はないと考えています。受け取った請求書の処理も、まず今のやり方を書き出します。取引先が30社ほどある会社なら、おおよそ次の流れになります。
| # | 作業 | よくある手作業 | 向いている解決策 |
|---|---|---|---|
| 1 | 届く | 担当者個人のメール、代表アドレス、取引先のWebサイト、郵送と、届く場所が取引先ごとにばらばら | 決めごと(請求書専用のメールアドレスを作り、取引先に送り先の変更をお願いする) |
| 2 | 取りに行く | 「請求書を発行しました」というお知らせメールを見て、取引先のサイトにログインしてPDFをダウンロードする | 取引先の設定で「PDFをメールに添付して送る」にできないか確かめる。できない分だけ手作業か、AIエージェント |
| 3 | 保存して名前を付ける | 添付ファイルを開き、日付・取引先・金額を見て、ファイル名を付け直し、月別のフォルダに入れる | ワークフロー自動化(保存・フォルダ分け)+AI(PDFから日付・取引先・金額を読む部分だけ) |
| 4 | そろったか確かめる | 先月のフォルダと見比べ、「あの会社の分がまだ来ていない」と思い出して催促する | 毎月届くはずの取引先の一覧と照らし、足りない分だけ自動で知らせる(ワークフロー自動化、または自社専用ツール) |
| 5 | 経理の次の作業へ渡す | 保存した請求書を見ながら、支払い予定表や会計ソフトに入力する | 保存と同時に一覧表を作り、会計ソフトに取り込める形にしておく |
書き出すと、手間の多くは1と2、つまり入口がばらばらなことから生まれていると分かります。届く場所が5か所あれば、確かめる場所も5か所になり、「担当者が休むと請求書が見つからない」「どの事業所の分か分からない」ということが起きます。3の保存と名前付けは毎月まったく同じ作業なので、入口さえそろえば、ほぼ人の手は要らなくなります。
最初にやること:請求書の受け取り口を1つに寄せ、「毎月届くはずの一覧」を作る
自動化の前に、2つの決めごとをします。どちらもAIは使いませんが、ここを飛ばすと、後でどんな仕組みを作っても漏れが残ります。
1. 請求書専用のメールアドレスを作り、取引先に送り先を寄せてもらう
「seikyu@自社ドメイン」のような請求書専用のアドレスを1つ作り、取引先に「今後の請求書はこちらへお送りください」とお願いします。取引先のWebサイトから発行される請求書も、通知先のメールアドレスをこのアドレスに変え、可能ならPDFを添付して送る設定にしてもらいます。担当者個人に届いていた請求書が1か所に集まるだけで、「誰かのメールに埋もれている」という問題はなくなります。
2. 「毎月届くはずの取引先」の一覧を作る
過去3か月分の請求書を見て、毎月届く取引先、だいたい何日ごろに届くか、どこから届くか(メール添付/Webサイト/郵送)、どの事業所・部署の分かを、Excelかスプレッドシートの表にします。この一覧がないと、「今月分がそろった」ことを誰も判断できません。逆にこの一覧があれば、「届いたもの」と照らして足りない取引先を機械的に出せます。
| 取引先 | 届く日の目安 | 届き方 | 事業所・部署 | 担当 |
|---|---|---|---|---|
| A社(資材) | 毎月5日ごろ | メール添付 | 本社 | 経理 |
| B社(通信費) | 毎月10日ごろ | Webサイトからダウンロード | 全社 | 総務 |
| C社(外注) | 毎月末 | 郵送 | 第二工場 | 工場事務 |
郵送でしか届かない請求書は、届いた日のうちにスキャンして、同じ請求書専用のアドレスやフォルダに入れるルールにします。こうすると、紙で届く分も含めて、入口が1つにそろいます。
3つの作業ごとに、ワークフロー自動化・AIエージェント・自社ツールから選ぶ
業務を自動化する方法は、ワークフロー自動化ツールで決まった手順を自動にする、AIエージェントに作業を代わりにやってもらう、コーディングエージェント(Claude Codeなど)で自社専用のツールを作る、の3つです。どれを選ぶかは、頻度(毎月くり返すか、1回きりか)、判断の要否(毎回同じ処理か、中身を見て判断するか)、今使っているツールの派閥(Microsoft・Google・ChatGPT・Claude)で決めます。
受け取った請求書の処理は毎月くり返し、判断もほとんど要りません。そのため、私の考えでは、基本はワークフロー自動化で組み、PDFの中身を読む部分だけAIを使う形が合います。AIは判断が必要なところで使うもので、決まった手順にAIを使う必要はありません。
| 作業 | おすすめの解決策 | 具体的な形 |
|---|---|---|
| 保存して名前を付ける | ワークフロー自動化+AIの読み取り | 請求書専用アドレスにメールが届いたら、添付PDFを取り出し、AIで日付・取引先・金額を読み、「20261105_A社_110000」のような名前で月別フォルダに保存し、一覧表に1行足す |
| そろったか確かめる | ワークフロー自動化、または自社専用ツール | 毎月決まった日に、一覧表と「毎月届くはずの取引先」を照らし、まだ届いていない取引先だけを担当者のチャットに知らせる |
| 取引先のサイトから取りに行く | まず取引先側の設定変更。残った分だけ手作業かAIエージェント | メール添付にできない取引先が数社なら、月1回の手作業で十分。数が多い場合だけ、ブラウザを操作できるAIエージェントや専用のサービスを検討する |
ワークフロー自動化のツールは、今使っている製品で決めます。Microsoft 365の会社ならOutlookとOneDrive(またはSharePoint)をPower Automateでつなぎ、Google Workspaceの会社ならGmailとGoogleドライブを、ZapierやGoogle Apps Scriptでつなぎます。ツールを1つに決められない会社や、細かい社内ルール(事業所ごとにフォルダを分ける、取引先ごとに名前の付け方が違うなど)が多い会社は、Claude Codeで自社専用の小さなツールを作る方が早いこともあります。
取引先のサイトにAIエージェントでログインさせる場合は、ログイン情報の管理に注意が必要です。共有のパスワードをAIに渡す前に、取引先のサイトに「メールにPDFを添付する」設定がないかを必ず先に確かめてください。多くの場合、そちらの方が安全で、仕組みも簡単です。
📌請求書の作成・入金確認・仕訳まで含めた経理全体の進め方は「ChatGPTの経理・総務での活用|チャットで済む4つの作業と、毎月くり返す作業の仕組み化」へ
名前の付け方を決めておくと、「探す」手間も電子帳簿保存法への備えも楽になる
保存するときのファイル名は、「日付_取引先_金額」の順にそろえることをおすすめします。名前がそろっていれば、フォルダを開いて並べるだけで月ごと・取引先ごとに見られ、「あの請求書どこ?」と人に聞く必要がなくなります。事業所や部署ごとに分けたい会社は、フォルダを事業所別にするか、名前の最後に事業所名を足します。困りごとリストにあった「証憑の事業所が分からない」という悩みは、保存する時点で事業所を決めておけば起きません。
また、メールやWebで受け取った請求書は、電子帳簿保存法の「電子取引」にあたり、紙に印刷して保管するのではなく、データのまま保存することが求められています。保存の方法や、日付・金額・取引先で探せるようにする要件などは、国税庁の「電子帳簿等保存制度特設サイト」で確認できます。会社の規模などで求められる内容が変わるため、自社に当てはまる要件は顧問税理士に確かめてください。名前の付け方と保存先を決めて自動で保存する仕組みは、その備えにも役立ちます。
保存した請求書を社内で探しやすくする考え方は、社内資料全般の話として別の記事にまとめています。
📌置き場所・中身・台帳の3つから「探しにくさ」の原因を見分ける方法は「社内の資料が探しにくい問題をAIで解決する方法」へ
公開事例:受け取り口を集約して請求書処理の時間を減らした例
請求書の受け取りと保存を仕組みにした例として、次の公開事例があります。以下は他の会社の公開事例(サービス提供会社の導入事例ページ)で、ホリエモンAI学校の受講企業の事例ではありません。
- i-PRO株式会社(公開事例・請求書の受け取り口の集約):月に約500枚の請求書が届き、紙に印刷して1枚ずつ手入力していたうえ、複数の担当者が並行して処理するため処理済みかどうか分からなくなっていたとされています。取引先ごとの回収用URL・回収用メールアドレスに請求書を集め、承認から支払いまでをつなぎ、請求書処理の代行サービスも組み合わせた結果、1か月の請求書処理にかかる時間は1〜2時間になったと紹介されています(出典:LayerX バクラク導入事例「i-PRO株式会社」、2026年7月8日)。
- オークラ工業株式会社(公開事例・受け取った帳票の保存と検索):電子データで受け取る帳票が増え、自社サーバーへの保存では電子帳簿保存法への対応が難しいと判断し、クラウドの保存サービスを導入。紙で保管していた納品書・請求書の書類探しがオンラインで完結し、1件10〜20分かかっていた書類検索が1分以内になったと紹介されています(出典:LayerX バクラク導入事例「オークラ工業株式会社」、2023年6月14日)。
どちらも、AIで読み取る前に「どこに集めるか」「どこに置いて、どう探すか」を先に決めています。専用のサービスを契約するか、ワークフロー自動化で自社で組むかは、請求書の枚数と、承認・支払いまで一緒に仕組みにしたいかで選びます。月に数十枚で、保存と名前付けだけを減らしたい会社なら、今使っているメールとクラウドの保存先をつなぐだけで足りることが多いです。
受け取った請求書の保存・管理についてよくある質問
請求書の保存を自動化するには、専用のサービスを契約しないといけませんか?
必ずしも必要ありません。メールで届く請求書を決まったフォルダに保存し、名前を付けて一覧にするだけなら、Power AutomateやZapierなどのワークフロー自動化ツールと、今使っているクラウドの保存先で組めます。請求書の枚数が多い、承認や支払いまで一緒に仕組みにしたい、という場合は専用サービスの方が早いこともあります。
請求書の中身をAIに読ませて、間違いは起きませんか?
取引先ごとに書式が違うと、読み間違いは起こりえます。そのため、AIが読んだ日付・取引先・金額はファイル名と一覧表に使うだけにして、支払いや会計ソフトへの登録の前には担当者が一覧表で確かめる流れにしてください。毎月届くはずの取引先の一覧と照らせば、取引先名の読み間違いにも気づけます。
受け取った請求書の管理は、まず何から始めればいいですか?
過去3か月分の請求書を見て、「毎月届くはずの取引先」と、それぞれがどこから届くかを一覧にしてください。そのうえで請求書専用のメールアドレスを作り、取引先に送り先の変更をお願いします。この2つが済めば、保存と名前付けの自動化はすぐに始められます。
まとめ:請求書は「読み取る」前に「入口をそろえる」
受け取った請求書の手間は、中身を入力する前の、取りに行く・保存して名前を付ける・そろったか確かめる、という作業から生まれています。受け取り口を請求書専用のアドレス1つに寄せ、毎月届くはずの取引先の一覧を作ったうえで、保存と名前付けはワークフロー自動化に、PDFを読む部分だけをAIに任せると、担当者がやることは「足りない分の催促」と「一覧の確認」だけになります。
「月初は請求書のダウンロードと整理で数日つぶれる」「担当者が休むと請求書がどこにあるか分からない」という状況なら、今の請求書の届き方を一緒に書き出し、どこを決めごとで直し、どこを自動にするかを決めるところから進められます。取引先への送り先変更のお願いだけで解決できる場合は、その旨を正直にお伝えします。
◤ 法人向け無料相談はこちら ◢