この記事は、ChatGPT・Microsoft Copilot・Geminiの比較記事をいくつ読んでも「結局うちの会社はどれを契約すればいいのか」が決められない中小企業の社長・DX担当者の、選べないまま導入が止まっているという困りごとを解決するために、私がこれまで400社・4,000人の研修で見てきたことをまとめたものです。
結論:法人のAIツール選びは、性能の比較ではほとんど決まりません。社員が毎日使っているメールとファイル置き場がMicrosoft 365ならCopilot、Google WorkspaceならGemini、どちらにも縛られていないならChatGPT(またはClaude)を軸にするのが基本です。そのうえで、会社のセキュリティのルールがどこまで許すかと、解決したい困りごとがチャットで済むものかを確かめて決めます。「どれが一番賢いか」から考え始めると、比較表を作っているうちに半年が過ぎます。
📌部署ごとのChatGPTの使い方の全体像は「ChatGPTの法人利用 完全ガイド|選ぶ・契約する・守る・使う・広げるの6つの順番」で解説しています。この記事は、ChatGPT・Copilot・Geminiのどれを会社の軸にするかの決め方に絞って書いています。
「どのAIを選べばいいか分からない」は、受講企業から実際に出てくる悩みです
ホリエモンAI学校では、受講企業に「困りごとリスト」を書いてもらっています。集まった1,705件を似たもの同士でまとめると、「どのAIツールを選び、使い分けるか分からない」という悩みは11件ありました。中身を見ると、次のような声です。
- どのAIツールに課金すべきか迷う
- どのAIをメインで使うか決められない
- 複数のAIの選び方・使い分けが分からない
- 複数AIを使い分けずに使いたい
出典:ホリエモンAI学校の受講企業が記入した困りごとリスト(1,705件を98種類にまとめた社内集計、2026年10月時点)。
私がこの悩みを聞いていつも感じるのは、多くの会社が「ChatGPTやGeminiそのものがAI活用だ」と思っている、ということです。業務を楽にする方法は、決まった流れを自動で回す「ワークフロー自動化」、判断を含む作業を任せる「AIエージェント」、自社専用の道具を作る「コーディングエージェント」の3つしかありません。チャットのAIはその入口です。だから、ツールを1つ選ぶことにそこまで時間をかける必要はなく、早く決めて、困りごとの解決に時間を使う方が成果につながります。
3つの違いは「頭の良さ」より「どこにつながっているか」
文章を書く、要約する、アイデアを出すといった普段の使い方なら、今はどれを使っても大きな差は出にくくなっています。法人で差が出るのは、会社のメール・ファイル・会議とどうつながっているかです。
| ChatGPT | Microsoft Copilot | Gemini | |
|---|---|---|---|
| 作っている会社 | OpenAI | Microsoft | |
| 相性のよい会社 | メールやファイル置き場が特定の会社に縛られていない会社 | Outlook・Teams・Excel・SharePointなどMicrosoft 365を全社で使っている会社 | Gmail・Googleドライブ・Meetなど Google Workspaceを全社で使っている会社 |
| 法人で使うときの契約 | ChatGPT Business(1人月3,050円から)など、ChatGPTを別に契約する | 対象の法人向けMicrosoft 365ライセンスがあれば、Copilot Chatは追加費用なしで使える。Word・Excel・Outlookの中で社内の資料やメールをもとに作業させるには、有料のMicrosoft 365 Copilotを追加する | GoogleはWorkspaceのBusiness・Enterpriseプランに、2025年からGeminiを含める形に変えている |
| 毎回くり返す作業の自動化 | Zapierなど外部のワークフロー自動化ツールとつなぐ | Power Automate クラウドでMicrosoft製品どうしをつなぐ | Googleの各サービスをつなぐ仕組みや、外部のワークフロー自動化ツールを使う |
出典:ChatGPTの料金は「ChatGPT有料プランの料金」で公式ページをもとにまとめた金額です。CopilotはMicrosoft公式のMicrosoft 365 Copilot Chatのページ、GeminiはGoogle Workspaceの料金ページをご確認ください。対象のライセンスや料金は変わることがあるので、契約前に必ず公式ページで最新の条件を確かめてください。
表を見ると分かるとおり、CopilotとGeminiは「今使っている仕事の道具にAIが付いてくる」もので、ChatGPTは「AIを別に契約して使う」ものです。ここが、法人の選び方を決める一番の違いです。
自社に合うツールは、3つの質問で決まる
私たちがお客様のツール選びで確認するのは、次の3つだけです。上から順に答えていけば、ほとんどの会社は迷わずに決まります。
質問1. 社員が毎日開いているメールとファイル置き場はどこか
AIのツールには、決まった正解はなく「派閥」があります。Microsoft派閥、Google派閥、ChatGPT派閥、Claude派閥です。会社がどの派閥の道具を使っているかで、選ぶべきAIはまったく変わります。たとえば議事録なら、MicrosoftならTeamsの、GoogleならGoogle Meetの、ZoomならZoomの議事録機能がすでに付いていることが多く、別のツールにお金を払う必要がない場合もあります。
特に、Microsoft 365を全社で使っている、あるいはCopilotを全社導入している会社は、会社の仕組み上ツールを変えにくいので、Microsoft製品の中で使い切ると決めた方がうまくいきます。
質問2. 会社のセキュリティのルールは、どこまで許すか
情報を外に出したくない度合いによって、選べる範囲が変わります。私は次の3段階で説明しています。一番守りが固いのは、社内のパソコンの中だけで動かすAI(ローカルLLM)を使う方法。二番目は、Microsoft製品以外は使わず、外部のサービスとの接続も止めて、Microsoftの内側だけで完結させる方法。三番目が、法人向けのChatGPTやClaudeを普通に使う方法です。
医療や個人情報を多く扱う会社なら一段目や二段目、そうでなければ三段目で十分という会社がほとんどです。この段階を社長が先に決めておかないと、担当者はどのツールも選べません。
質問3. 解決したい困りごとは、チャットで済むものか
メールの下書きや資料の要約のように、毎回中身が違う作業なら、どのチャットAIでも楽になります。一方、請求書の転記や日報の集計のように毎回同じ流れをくり返す作業は、チャットに話しかけるより、ワークフロー自動化で仕組みにした方が減ります。ここで、質問1の派閥が効いてきます。Microsoft一色の会社なら、自動化はPower Automate クラウドで組むことになり、AIエージェントはほとんど使わず「Office製品に付いているCopilot機能」「Copilot Chat」「Power Automate クラウド」の3つで組み立てます。
パターン別:どれを軸にするか
3つの質問の答えを、よくあるパターンに当てはめると次のようになります。
| 会社の状況 | 軸にするツール | 最初にやること |
|---|---|---|
| Microsoft 365を全社で使っている(Copilotも導入済み) | Microsoft Copilot | ChatGPTを別に契約せず、Copilot Chatと、Excel・Outlookに付いているCopilot機能を業務に当てはめる。自動化はPower Automate クラウド |
| Microsoft 365を使っているが、Copilotは未導入 | まずCopilot Chat | 追加費用なしで使える範囲で、困りごとが減るかを試す。社内の資料をもとに作業させたい場面がはっきりしたら、有料のMicrosoft 365 Copilotを必要な人数分だけ検討する |
| Google Workspaceを全社で使っている | Gemini | Gmail・ドキュメント・Meetに付いているGeminiを、議事録やメールなど毎日の作業から使い始める |
| 特定の会社の道具に縛られていない/混在している | ChatGPTまたはClaude | 法人プランを1つ選び、社員の個人アカウントでの業務利用をやめてもらう |
最後のパターンで、お客様から「何でもいいので選んでほしい」と言われたときは、私たちが選ぶことも多く、今ならClaude(作業まで任せられるClaude Code)を勧めています。ただ、ChatGPTでもGeminiでも、好きなもので構いません。ホリエモンAI学校の研修は、ChatGPT・Copilot・Gemini・Claudeの4つすべてに対応しているので、会社の今の環境に合わせて進めます。
複数のAIを混ぜて使うときの3つの注意
「複数AIを使い分けずに使いたい」という声があるとおり、ツールが増えるほど社員は迷います。混ぜて使うなら、次の3つを守ってください。
1. 会社の「メインのAI」は1つに決めて、社内ルールに書く
メインを決めないと、部署ごと、人ごとに違うツールが使われ、ノウハウが共有されません。社内ルールに「会社として使ってよいAIの名前とプラン」を書き、それ以外を使いたいときの相談先も決めておきます。
2. 社員の個人アカウントでの業務利用は禁止する
会社が決めたもの以外のAIを個人で使うこと(いわゆるシャドウAI)は、基本的に禁止した方がいいと考えています。「Copilotは会社で入れたが、使い慣れた個人のChatGPTに会社の資料を貼っている」という状態がいちばん危険です。
3. 同じ役割のツールに二重で払わない
Microsoft 365でCopilot Chatが使えるのに、全員分のChatGPTも契約している、という会社は少なくありません。「ChatGPTを使うのは誰の、どの業務か」が説明できない分の契約は、減らしてよい費用です。
📌個人アカウントでの業務利用をやめる理由と、会社アカウントへの移し方は「ChatGPTの法人と個人の違い|個人アカウントの業務利用のリスク3つと、会社アカウントへ移す4ステップ」へ
比較表より先にやる4ステップ
明日から動くなら、次の順番で進めてください。
| ステップ | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1. 今の道具を確かめる | 社員が毎日使っているメール・ファイル置き場・会議ツールを書き出し、Microsoft/Google/どちらでもない、のどれかを決める | 30分 |
| 2. ルールの段階を決める | 社長が、情報をどこまで外に出してよいか(3段階のどれか)を決め、使ってよいAIを1つ書いた社内ルールを作る | 1週間 |
| 3. 困りごとを1つ選んで試す | 業務を四角と矢印で書き出し、困りごとを5つ書いて、そのうち1つを軸のAIで2週間試す | 2週間 |
| 4. 契約を決める | 試した結果から、毎日使う人の人数分だけ有料プランを契約する。くり返す作業はワークフロー自動化に回す | 1か月 |
ステップ2の社内ルールには、入れてよい情報の線引きも必要です。Copilot・Gemini・ChatGPTのどれを選んでも、設定を確かめないまま使うと情報が漏れる道は残ります。管理者が確認する設定は「ChatGPTの情報漏えい対策|会社で使うときの5つの漏れ道と、管理者が確認する設定チェックリスト」、Copilotを入れたのに使われていない場合の立て直し方は「Copilotを社員が使いこなせない5つの原因とは?」で解説しています。
ChatGPT・Copilot・Geminiの法人での比較についてよくある質問
ChatGPTとCopilotは、両方契約した方がいいですか?
最初から両方を全員分契約する必要はありません。Microsoft 365を全社で使っているなら、まずCopilot Chatで足りるかを試し、それでも足りない業務がある人だけChatGPTなどを追加するのが無駄のない順番です。両方使う場合も、会社の「メインのAI」はどちらか1つに決めてください。
Geminiは無料で使えますか?
会社でGoogle Workspaceを契約していれば、GoogleはBusiness・EnterpriseプランにGeminiを含めて提供しています。ただし、社員が個人のGoogleアカウントで使う無料版は、会社の管理が届かないため業務には使わないでください。対象のプランと条件はGoogle Workspaceの公式ページで確認してください。
結局、どれが一番賢いのですか?
文章作成や要約など普段の使い方では、どれを使っても差は大きくありません。各社が数か月ごとに新しいモデルを出すので、「今どれが一番か」はすぐに入れ替わります。法人で選ぶときは、賢さより、今使っている道具とつながるか、社内ルールで許せるか、で決める方が後悔しません。
📌ChatGPTを選んだ場合の料金と人数の決め方は「ChatGPT有料プランの料金|法人Businessは1人月3,050円から」へ
まとめ:AIツールは「今使っている道具」で決めて、困りごとに時間を使う
ChatGPT・Copilot・Geminiの違いは、頭の良さより、会社のメール・ファイル・会議とどうつながっているかにあります。Microsoft 365の会社はCopilot、Google Workspaceの会社はGemini、どちらにも縛られていない会社はChatGPTかClaudeを軸にし、社長がセキュリティの段階を決めて、メインのAIを1つ社内ルールに書いてください。ツール選びは早く終わらせ、浮いた時間を「どの業務の、どの困りごとを解決するか」に使うことが、成果への近道です。
「比較記事を読んでも、自社がどれを選べばいいか決められない」「CopilotとChatGPTを両方入れたが、どちらもあまり使われていない」という状況なら、今の環境とセキュリティのルールを確認したうえで、軸にするツールと最初に解決する困りごとを一緒に決めるところから進められます。自社だけで決められる場合は、その旨を正直にお伝えします。
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